JRAレモンポップは「本当にマイルが長かった」のか!? フェブラリーS(G1)優勝でドバイも視野…陣営のコメントを覆したギルデッドミラーの存在

レモンポップ 撮影:Ruriko.I

 今年最初のG1開催となったフェブラリーS(G1)を制したのは、若手の有望株・坂井瑠星騎手とレモンポップ(牡5、美浦・田中博康厩舎)のコンビだ。同馬は、これまで主戦を務めていた戸崎圭太騎手から坂井騎手への乗り替わり。テン乗りでG1の1番人気馬に騎乗する重圧もあっただろうが、初騎乗とは思えない堂々たるレースぶりだった。

 その一方、戦前から不安視されたのは、陣営がベストと考える1400mからの距離延長である。前哨戦の根岸S(G3)を制した際も、指揮官から「状態をまず確認して、見極めてから行く、行かないは慎重に判断したい」というコメントが出されていたように、文句なしの主役候補だったのかとなると、そうは言い切れない事情もあった。

 何しろG1の本番はG3よりメンバーが強化されるだけでなく、2着馬ギルデッドミラーも出走を視野に入れていたからに他ならない。

陣営のコメントを覆したギルデッドミラーの存在

 2頭の初対決となった昨年11月の武蔵野S(G3)では、先に抜け出したレモンポップをギルデッドミラーがハナ差交わして勝利した。得意とする1400mの根岸Sでリベンジに成功したとはいえ、フェブラリーSは武蔵野Sと同じ1600mが舞台。距離が1ハロン延びるなら武蔵野Sの再現があっても不思議ではないと考えるファンは、少なくなかったはずである。

 しかし、脚元に故障が判明したギルデッドミラーが引退し、最大のライバルが不在となったこともレモンポップ陣営にとって幸運だっただろう。レース内容も好位から楽に抜け出す横綱相撲を演じ、完勝といえる初G1戴冠でもあった。

 勿論、最後方から猛然と追い上げたメイショウハリオにスタートで落馬寸前のアクシデントが発生したことには、触れておかなくてはならないが、マイルでもレモンポップが圧倒的な強さを見せたことは事実だ。

 そこで改めて強さを証明する格好となったのがギルデッドミラーだろう。あれだけレモンポップ陣営が、距離延長に慎重な姿勢を見せたのは、やはり武蔵野Sの敗戦が関係しているはずだ。

 にもかかわらず、ダートマイルの頂点に位置するG1を楽勝したのだから、「1ハロン長い」先入観のあった馬を1番人気に支持したファンもさすがである。勿論、レモンポップの1400mベスト説に異論を唱えるつもりはないが、こうしてG1を勝ったからには、ギルデッドミラーが強かっただけという見方もできないだろうか。

 レース後に「オーナーの強い意思があってこその出走」「そこに関しては非常に感謝しています」と振り返った指揮官のコメントからも、どちらかというと前向きな参戦ではなかったようにも感じられる。

 ただ裏を返せば、ギルデッドミラーがレモンポップの陣営に「距離延長」を不安視させたともいえる。それだけに本馬の引退は非常に残念な限り。2頭が再びフェブラリーSで戦う姿を望んだファンも大勢いただろう。

 意地の悪い言い方をすれば、マイルに関して“距離の言い訳”ができなくなってしまったレモンポップであるが、今後は登録のあるドバイワールドカップデー(3月25日)に開催されるゴールデンシャヒーン(G1・ダート1200m)とゴドルフィンマイル(G2・ダート1600m)も視野に入ってくる。

 あくまで選択肢のひとつということだが、距離不安を貫くスタンスなら前者、フェブラリーSの勝利で克服したとするなら後者か。賞金的に上回るG1を優先する可能性もあるだろう。

 いずれにしてもレモンポップ陣営としては、得るモノの多かったG1初挑戦だったのではないか。

高城陽

大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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