「ルドルフの仔に凄いのがいるらしい」皇帝から帝王への系譜、トウカイテイオー復帰戦に沸いた1992年大阪杯【競馬クロニクル 第3回】

 

第3回は「帝王」トウカイテイオーの伝説

 今週末、春の古馬中距離G1として定着した大阪杯(阪神・芝2000m)が開催される。このレースの歴史を振り返ってみよう。

 大阪杯が創設されたのは1957年のこと。名称は「大阪盃競走」で、距離は現在より少し短い1800mだった。その後、2度の距離延長を経て、1972年に現在と同じ2000mで施行されるようになった。

 1984年にJRAがグレード制を導入した際に大阪杯はG2に格付けされ、もっぱら天皇賞・春(G1、京都・芝3200m)のプレップレース(前哨戦)と位置付けられていた。
 
 そして、阪神競馬場でのG1レースの増加を熱望する関係者の声や、春シーズンに古馬中距離戦線をさらに充実させたいというJRAの思惑が合致するかたちで、2017年からG1に昇格。その後は本レース自体が古馬にとっての大目標へと変化、定着してきた。

 とはいえ、筆者を含めて競馬のオールドファンにとっての大阪杯は「G2」の印象が今もってとても強いのも確かだ。それは勝ち馬にはすでにG1を勝っている馬、もしくはのちにG1ホースとなる優駿たちの錚々たる名前が並んでいることに起因するところが大きい。
 
 G2時代にこのレースを勝ったG1ホースを挙げてみよう。
 
 カツラギエース(84年)、サクラユタカオー(86年)、フレッシュボイス(88年)、ヤエノムテキ(89年)、スーパークリーク(90年)、トウカイテイオー(92年)、メジロマックイーン(93年)、ネーハイシーザー(94年)、タイキブリザード(96年)、マーベラスサンデー(97年)、エアグルーヴ(98年)、ネオユニヴァース(04年)、カンパニー(06年)、メイショウサムソン(07年)、ダイワスカーレット(08年)、ドリームジャーニー(09年)、オルフェーヴル(13年)、キズナ(14年)、ラキシス(15年)。

 これらの名前を見ただけで、大阪杯がいかにレベルの高いG2レースだったかが分かろうというものだ。
 
 なかでも、トウカイテイオーが勝った92年の盛り上がりは空前のものだった。その様子をあらためて振り返ってみる。

「(シンボリ)ルドルフの仔に凄いのがいるらしい」

 無敗の三冠馬として知られ、『皇帝』とも称されたシンボリルドルフの初年度産駒として生を受けたトウカイテイオーは、デビュー前からトラックマンのあいだで噂になるほどの馬だった。

 その評判に違わず、彼は連戦連勝で皐月賞(G1)、日本ダービー(G1)を圧勝。無敗のまま春季クラシック二冠を制して、ファンを熱狂の渦に巻き込んだ。

 しかし、禍福は糾える縄の如し。日本ダービーの直後に左後肢の骨折が判明。全治6カ月との診断を受け、秋シーズンの復帰は不可能となり、三冠馬となる夢はついえた。

 休養を経て怪我も癒え、戦列に復帰したのは前年の日本ダービーから約10カ月後の大阪杯だった。

 鞍上がそれまでの安田隆行騎手から、トウカイテイオーの父、シンボリルドルフの全戦でコンビを組んだ岡部幸雄騎手に手綱がわたることもあり、ファンもマスコミも大いに盛り上がった。

 レース当日の阪神競馬場には開門前から長蛇の列ができ、G2レースとは思えないほどの熱気に包まれ、関東を拠点にしているフリーランスのカメラマンやライターも大挙して阪神へと取材に訪れた。

 単勝オッズ1.3倍。圧倒的な支持を受けてレースに臨んだトウカイテイオーは、ここで圧巻の走りを見せる。

 スローペースの3番手で折り合って進み、直線へ向くと、あの独特の跳ねるようなステップを繰り出して“持ったまま”で先頭へ。そして結局、岡部騎手はほとんど手を動かすことなくゴールを駆け抜けたのである。

 記者に感想を訊ねられると、岡部騎手は滅多に見せない紅潮した表情で、
「地の果てまで駆けて行きそうな手応えでした」
 と、その走りを絶賛した。

 その後、“現役最強”の名をほしいままにしていた1つ年上のメジロマックイーンと初めて直接対決する天皇賞・春に向かって、さらにファンの熱狂のボルテージは上がっていくのだが、それについてはまた別項に譲ることにする。

 今年はジェラルディーナ、スターズオンアースなど、強力な牝馬が顔を揃えた大阪杯。また新たにどんな蹄跡を刻んでくれるのか、楽しみは尽きない。

三好達彦

1962年生まれ。ライター&編集者。旅行誌、婦人誌の編集部を経たのち、競馬好きが高じてJRA発行の競馬総合月刊誌『優駿』の編集スタッフに加わり、約20年間携わった。偏愛した馬はオグリキャップ、ホクトヘリオス、テイエムオペラオー。サッカー観戦も趣味で、FC東京のファンでもある。

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