蛯名正義「采配ミス」からの手のひら返し!? 非情の決断も結果は裏目…「G1級」素質馬に欠かせなかった名手の存在

岩田康誠騎手

 一度は解散したコンビが再結成することとなった。

2月のフェブラリーS(G1)で14着に大敗したテイエムサウスダン(牡6、美浦・蛯名正義厩舎)だが、『東京スポーツ』が報じた記事によると、次走は5月4日のかしわ記念(G1)を目標に同月31日のさきたま杯(G2)を予定していることが分かった。

 それと同時に注目したいのは、同馬の鞍上が岩田康誠騎手に戻るという話だ。岩田康騎手が騎乗した際には【4.2.1.2/9】と非常に好相性のコンビとしても知られていたが、近2走はいずれも14着と精彩を欠いていた。

 この不振にはテイエムサウスダンが、関西の飯田雄三厩舎から関東の蛯名正厩舎へと転厩した影響も大きいだろう。蛯名正師も「関東の重賞を狙っているオーナーサイド」の要望に応えたと説明していたが、ファンの賛否が分かれたのは、主戦を任されていた岩田康騎手からC.ルメール騎手への乗り替わりについてだ。

 これには「これまで乗ってくれた(岩田)ヤスが悪いわけではないけど、ここ2戦勝てていないので……」としつつ、「厩舎として心機一転、違うジョッキーにお願いすることにしました」という経緯もあったようだが、ネットの掲示板やSNSなどでは、前任者の岩田康騎手に同情的な声も多く見られた。見方によっては非情にも映る決断をした蛯名正師としては、“采配ミス”といわれないためにも、結果を求められる状況だった。

 しかし、ルメール騎手と初コンビを組んだ根岸S(G3)でテイエムサウスダンは14着に大敗。レース後に元JRA騎手の安藤勝己氏は自身のTwitterで「テイエムサウスダンはルメール向きの馬やない」と見解を述べ、岩田康騎手からの乗り替わりを敗因のひとつとして挙げた。

 勿論、この一戦のみでルメール騎手との相性がよくないとは言い切れないのだが、コンビ2戦目のフェブラリーSでも再び14着という結果に終わってしまった。根岸SにしてもフェブラリーSにしても、ルメール騎手のコメントからは「いいレースはしてくれたけれども反応がなかった」というニュアンス。馬の体調や仕上がりには問題がないとされていただけに、陣営にも不可解な敗戦だったといえよう。

 そこで思い浮かぶのが、先述した安藤氏による「ルメール向きの馬やない」という言葉だ。

「G1級」素質馬に欠かせなかった名手の存在

 激しいアクションで闘魂を注入するタイプの岩田康騎手と華麗な手綱捌きでクレバーな騎乗をするルメール騎手は、どちらかというと真逆のタイプ。騎手という職業は同じでも“動と静”に近いキャラクターだろう。

 しかも、岩田康騎手は自分で追い切りをつけるなど、お手馬と密接にコンタクトを取る騎手でもある。人馬のコミュニケーションが深まるほど、岩田康騎手専用の馬としてカスタマイズされ、他の騎手には闘志に火をつけるスイッチのありかが分からないなんてことも、場合によっては起こりそうだ。

 実際のところはこういった“憶測”の真偽は定かではないものの、蛯名正師が元サヤに戻したことは、ファンの間で賛否の分かれたこの乗り替わりが、結果的に采配ミスだったと認めた格好になるかもしれない。

 関東の名門である藤沢和雄厩舎のマインドを受け継いだ蛯名正義厩舎だが、今年の全国リーディングは100位台ともうひとつ。“手のひら返し”でコンビを再結成しても、自身が管理するテイエムサウスダンに変化がないようなら、調教師としての手腕も疑問視される恐れすらある。次走のかしわ記念では結果が欲しいところだ。

高城陽

大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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