出走権を獲得するも「花」が咲いたのはオークスより後。横山典弘初G1と、華麗なる一族の末裔…名牝2頭が競った90年オークストライアル
23日、東京競馬場にてオークストライアル・フローラS(G2)が開催される。例年、桜花賞(G1)に間に合わなかった馬が、牝馬クラシックの大一番への優先出走権を懸けて激突する注目のレースだ。
本番のオークス(G1)では近年、トライアル組の好走も目立つようになってきており、このレースもオークスへ向けて各馬の実力を見極める意味で重要な一戦となっている。
過去を遡ると初代三冠牝馬メジロラモーヌや二冠牝馬マックスビューティといった名馬の名前もあり、さらに遡ると三冠馬ミスターシービーを産んだシービークインも勝ち馬の名前も連なるのだが、ここを勝って後に活躍した馬は意外に少ない。
名牝2頭が競った90年オークストライアル
そんな中で、今回は90年キョウエイタップが勝ったサンケイスポーツ賞4歳牝馬特別(当時の名称)を紹介してみたい。
90年の牝馬クラシックはアグネスフローラ1強ムードで始まった。前年の新馬戦を10馬身差で大楽勝したあと、明け4歳(以下、当時表記)でも条件特別、エルフィンS、チューリップ賞と3連勝。4戦4勝で桜花賞に出走すると、そこでも単勝2.2倍の1番人気に推され、危なげなく快勝した。
そんな情勢の中で迎えたオークストライアル。桜花賞で大敗を喫し、オークスへの出走権を獲るために出走してきた桜花賞組、桜花賞に間に合わず、二冠目のオークスを目指して出走してきた別路線組にわかれた出走メンバー。
1番人気に推されたのは「華麗なる一族」の良血馬、ダイイチルビー。4歳でデビューするも3戦目の忘れな草賞(OP)で勝ちを拾えず、ここに出走してきた。
2番人気は前走フラワーC(G3)で3着に好走するも賞金を加算できず、桜花賞を断念したメジロマドンナ。3番人気は3歳(以下、当時表記)時にテレビ東京杯3歳牝馬S(現フェアリーS)と明け4歳でクイーンCをともに2着したタカラスマイル。
そろったスタートを切ると、内枠を利してパトラッシュが先手を取ってハナに立つ展開。2番手にヤマタケサリー、並ぶようにカシマスズランが追走。これに続いてダイイチルビーとイクノディクタスが4番手、5番手あたりを進み、1000m通過が60秒ジャストと遅めのペースで淡々と進んでいく。
カシマスズランがポジションを上げて4コーナーを回って直線に向かうと、前の馬が脱落していく中、ダイイチルビーが脚を伸ばして抜け出す。そのまま押し切ろうとする中、後方から横山典弘騎手のキョウエイタップが襲いかかり、ゴール前クビだけ交わして勝利を挙げた。
誰もがゴール直前まで1番人気ダイイチルビーの勝利かと思ったところで、2位ゾウゲブネメガミに0.7秒差をつける上がり3ハロン最速の脚で強襲したキョウエイタップの切れ味が印象に残るレースとなった。
そして迎えたオークス。桜花賞楽勝の強さを買われ、二冠も間違いないだろうと見られていたアグネスフローラが1番人気になるが、直線で後ろから来たエイシンサニーに差されて2着。トライアル勝利の印象もあってかキョウエイタップは4番人気、惜しくも勝ちを逃したダイイチルビーが2番人気になっていたが、キョウエイタップは6着、ダイイチルビーは掲示板確保の5着で終了した。
この2頭のキャリアはむしろここからが始まりで、キョウエイタップは夏を全休すると、秋にクイーンSと牝馬東京タイムズ杯を使われるが凡走。当時、牝馬三冠の最後を飾ったエリザベス女王杯では8番人気まで人気を落としたが、後方一気を決めてラスト1冠を奪取。横山典弘騎手に初G1をプレゼントした。
一方、ダイイチルビーはというと、こちらも夏を全休し、秋になってローズS(G2)を使われるが5着に敗れると、そのまま4歳シーズンを終えてしまう。明け5歳になって短距離に路線変更し、春は安田記念(G1)、秋はスプリンターズS(G1)を制して名牝として名前を残した。
オークスで花を咲かせることはなかったが、オークスの後になってG1馬になったトライアルの1着、2着馬。ちょっと珍しいケースとして記憶に残ったレースであった。