C.ルメール騎手が皐月賞1番人気と天秤にかける「もう1頭」のキタサンブラック産駒。王者ソールオリエンスの逆転候補は超ハイレベルの青葉賞(G2)から?

ソールオリエンス 撮影:Ruriko.I

「この馬の強さは僕が一番知っているので、負けるとしたら展開のアヤだったり、これよりシンプルに強い馬がいたりかなと思っていました。ひと言で走る、走る馬です。すごく良い馬です」(ソールオリエンス 横山武史騎手)

 今年の3歳牡馬クラシックは、ソールオリエンスという無敗の新王者誕生によって開幕した。4コーナー17番手という絶望的な位置取りから差し切ったパフォーマンスも然ることながら、キャリア3戦目の戴冠はコントレイルやエフフォーリアらを上回る史上最少記録である。

 また、1枠1番の不利を跳ね返しての優勝は1988年ヤエノムテキ、1994年ナリタブライアン、2020年コントレイルに続く史上4頭目。2頭は後の三冠馬であり、ヤエノムテキも天皇賞・秋(G1)でG1・2勝目を飾った名馬だ。ソールオリエンスの未来は極めて明るいと言って良いだろう。

 戦前では大混戦と言われていた今年の3歳牡馬クラシックだが、次の日本ダービー(G1)では無敗の皐月賞馬が確固たる主役となりそうだ。

 しかし、では「ソールオリエンスの春二冠は盤石か」と問われれば、まだイエスとは言い切れない。何故なら、近5年の日本ダービーは2回も皐月賞以外の「別路線組」が“逆転勝利”を飾っているからだ。

逆転候補は超ハイレベルの青葉賞(G2)から?

 特に今年は、王道トライアルの青葉賞(G2)が「例年以上のハイレベルになりそう」と早くから噂されている。

「東京のマイルは2000mくらいを走れるスタミナがないといけないと思っているので、中山より東京の1600mの方がいいと思っています」

 先日のニュージーランドT(G2)で3連勝を飾り、NHKマイルC(G1)へ大きな弾みをつけたエエヤン。本馬を管理する伊藤大士調教師がレース後、そう抱負を語っていた。

 ここまで5戦3勝のエエヤンだが、3勝はいずれも中山。NHKマイルCが2戦2敗の東京で行われることから出た発言だが、これは単なる強がりではない。何故なら、東京の2敗はいずれも明確な敗因があるからだ。

「(スタート直後に)内から並び掛けられたんですよ。そこから間もなく先頭に立ったのですが、スイッチが入ってしまって、力んだ状態での逃げになってしまいました。ああなっては息が入らない」

 レース後、鞍上の北村宏司騎手が悔しがったのが、5着に敗れた2戦目の未勝利戦だ。スタートこそよかったものの、競り掛けられて馬がエキサイト。不本意な形でハナに立ってしまい、最後の失速につながった。本来の走りがまったくできておらず、度外視していいレースだろう。

 だが、もう1つのレースでは、エエヤンはしっかりと能力を発揮している。

 スタートでやや後手を踏んだエエヤンだが、すぐ隊列に取りついたように許容範囲だった。最後の直線でもしっかりと脚を使い、一時は先頭に躍り出る悪くない競馬。後の3連勝の内容を見てもデビュー戦で躓くような器ではないはずだった。

 だがその直後、エエヤンはすぐ隣にいたスキルヴィングにねじ伏せられている。

「スタミナと能力があって距離は2000mでも2400mでも大丈夫。キタサンブラック産駒で伸びしろがある」

 2月のゆりかもめ賞(1勝クラス)勝利後に、主戦のC.ルメール騎手からそう絶賛された大器は、単勝1.5倍の支持に応える2連勝を飾っている。楽勝した舞台は日本ダービーと同じ東京・芝2400mであり、勝ち時計2分24秒8も前日に行われた古馬3勝クラス・早春Sより0秒6も上だ。

C.ルメール騎手 撮影:Ruriko.I

「非常に強い内容がちょっとした話題になったレースでした。ゆりかもめ賞は有馬記念(G1)を勝ったブラストワンピースや菊花賞(G1)2着のホオキパウェーブなど、後に重賞戦線を沸かせる逸材が数多く勝ち馬に名を連ねていますが、勝ち時計2分24秒8は東京・芝2400mで行われた中では歴代最速。それも2着馬に3馬身差をつける楽勝でした。

2着のサヴォーナも後にアザレア賞(1勝クラス)を単勝1.5倍で完勝しているだけに、決して弱くはない馬。日本ダービーを見据えて青葉賞を予定しているスキルヴィングですが、もうこの時期から『本番でもルメール騎手が乗るのでは』と噂になっています」(競馬記者)

 ルメール騎手といえば、皐月賞で1番人気に推されて3着したファントムシーフの鞍上だ。東京の共同通信杯(G3)の勝ち馬だけに、日本ダービーでも最有力候補の一角に名を連ねるはずだが、スキルヴィングはそんな名手の心さえ揺らがせるほどの大器ということだろうか。

「ただ、今年の青葉賞は面白いメンバーが揃いそうなだけに、スキルヴィングといえど一筋縄ではいかないかもしれません。

特に新馬戦でスキルヴィングとエエヤンを破ったヒシタイカンは要注目の存在ですね。青葉賞が久々のレースになるだけに状態面がカギを握りそうですが、福永祐一騎手(現調教師)が『注文をつけるところがない』と絶賛した逸材。ここを突破してダービーに出てくるようなら、打倒ソールオリエンスの筆頭候補に名を連ねることになるでしょう」(同)

 今年の青葉賞には、他にもきさらぎ賞(G3)2着のオープンファイアや、兄弟にヴィルシーナやシュヴァルグラン、ヴィブロスらがいるグランヴィノス、東京スポーツ杯2歳S(G2)や若葉S(L)で1番人気だったハーツコンチェルトなど、例年であれば1番人気になってもおかしくない逸材も出走予定。「青葉賞組はダービーを勝てない」と言われて久しいが、今年はジンクス打破に楽しみな逸材が揃った印象だ。

 逆に言えば、スキルヴィングやヒシタイカンがここをあっさりと突破してくるようなら、ソールオリエンスも安泰とは言えないだろう。3歳牡馬クラシックの頂上決戦が、いよいよ熱を帯び始めてきた。

GJ 編集部

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