「単勝215.4倍」ハギノピリナの大外一気を彷彿…オークス(G1)大波乱の「主役」はこの馬!?
29日、京都競馬場で行われた矢車賞(1勝クラス、芝2200m)は、5番人気のミタマ(牝3歳、栗東・上村洋行厩舎)が勝利。最後の直線入り口では最後方という苦しい位置取りだったが、大外一気で突き抜けた。
「未勝利戦を勝ち上がるまでに4戦を費やし、初重賞のフェアリーS(G3)で12着に大敗するなど、デビュー当初は目立った存在ではありませんでした。
ただ、フェアリーSの後に(当時の鞍上だった)岩田望来騎手が『1600mは忙しい』と話していた通り、もともと長い距離が良さそうな馬。今回も松若風馬騎手がレース後に『前半は進まなかった』と振り返っている通り、この時期の2200mは3歳牝馬にとって過酷な距離ですが、ミタマの場合は距離を延ばしたことで真価を発揮できたようです。
この時期の1勝は大きいですし、最後の直線で見せた脚はなかなかのもの。これから長い距離のレースも増えてくるので、今後が楽しみな馬ですね」(競馬記者)
桜花賞(G1)とオークス(G1)の間にある3歳牝馬限定戦である矢車賞。この時期の1勝クラスだけにエリート同士の争いとはいえないかもしれないが、このレースは近年の隠れた出世レースとして知られている。
2017年の優勝馬はディアドラ。秋に秋華賞(G1)を制し、古馬になってからは英国のナッソーS(G1)を勝つなど、海外行脚を敢行した国際的名牝だ。さらに2020年の勝ち馬ソフトフルートも秋華賞で3着、2着馬アカイイトは古馬になってからエリザベス女王杯(G1)を制した。
彼女たちは春のクラシック戦線には間に合わなかった馬だが、矢車賞を勝った勢いのままオークスで大波乱を起こした馬がいる。一昨年の勝ち馬ハギノピリナだ。
デビュー戦で11着に大敗するなど、特別目立った存在ではなかったハギノピリナ。3戦目に未勝利を脱出し、矢車賞を勝ってオークスへ進んだが、相手は同世代のエリートたちだ。2連勝の勢いこそあったものの単勝は215.4倍の16番人気と完全にノーマークの存在だった。
しかし、最後の直線では白毛の女王ソダシが伸びあぐねる中で大外を強襲。勝ったユーバーレーベンには及ばなかったものの2着アカイトリノムスメとハナ差の接戦を繰り広げ、三連単53万2180円という波乱の主役になった。
「道中はいつでも動けそうな感じだったし、直線もいい加速でした。距離が延びたのも良かったし、いい時に乗せてもらいました」
あのオークスから2年。ハギノピリナと同じように長い距離への適性を見せたミタマは、レース後に松若騎手からそう称えられている。オークスへ駒を進めるかは現時点で未定だが、出走が叶えば密かに狙ってみたい1頭になりそうだ。