覚悟の「逃げ宣言」がタイトルホルダーをかき乱す!? 2年前にハイペース演出「第3の逃げ馬」も大本命馬の楽逃げ許さず
天皇賞・春(G1)が3年ぶりに京都競馬場で行われる。
29日に発表された前日最終オッズ(17時半現在)で1番人気に推されているのはタイトルホルダー(牡5歳、美浦・栗田徹厩舎)で、1.6倍という圧倒的な支持を集めている。
前走の日経賞(G2)は本番を見据えた叩き台。59kgを背負っていたにもかかわらず、2着馬ボッケリーニを8馬身も突き放した。その姿はまさに王者そのもの。そんな“圧逃劇”を見れば、この人気も当然といえば当然か。
ただしタイトルホルダーが見せた前走の鮮やかな勝ちっぷりが、逆に思わぬ落とし穴となるかもしれない。
競馬界には「人気の逃げ馬は危険」という格言が存在するのは多くのファンの知るところ。特に1番人気の逃げ馬は目標にされやすくなる分、他馬に競りかけられるリスクが増すためだ。
タイトルホルダーはこれまで逃げて結果を出しているじゃないか――。競馬ファンからはそういう声も聞こえてきそうだが、実はタイトルホルダーのG1制覇は、いずれも1番人気でのものではない。菊花賞(G1)は4番人気、そして昨年の天皇賞・春と宝塚記念(G1)は2番人気での勝利だったのだ。
圧倒的人気に推されそうな今回は、これまで以上にマークが厳しくなるのは明らか。しかし、そもそもタイトルホルダーが前走のようにすんなりと逃げられるかどうかも微妙な状況にある。
大外17番枠に入ったアフリカンゴールド(セ8歳、栗東・西園正都厩舎)の陣営が“逃げ宣言”をしているからだ。
覚悟の「逃げ宣言」がタイトルホルダーをかき乱す!?
「無理やりにでも行った方がいい」「大外枠なんで腹をくくってハナへ行くしかない」
『スポーツニッポン』の取材にそう答えたのはアフリカンゴールドの西園助手だ。その言葉を素直に受け取れば、タイトルホルダーが2番手からの競馬になる可能性は高い。ただ、昨年の宝塚記念ではパンサラッサを行かせて2番手から完勝しており、逃げなくても結果を出しているのがタイトルホルダーの強みでもある。
ただし、少々厄介なのが「(序盤で)ペースが遅くなった時にハナに立って、後ろを離して行きたいと考えています」という西園正師のコメントである。
師の言葉を読み解けば、序盤はテンのスピードで上回るタイトルホルダーを先に行かせ、途中からアフリカンゴールドが競りかけていく展開が予想される。タイトルホルダーとしては、道中息を入れたいところで競りかけられるのは避けたいところ。鞍上の横山和生騎手がアフリカンゴールドに対してどんな戦法を取るかも、レースのカギを握るだろう。
「第3の逃げ馬」も大本命馬の楽逃げ許さず
さらに実はタイトルホルダーをかき乱しそうなもう1頭の“隠れ逃げ候補”もスタンバイしている。2年前に逃げの手を打ったディアスティマ(牡6歳、栗東・高野友和厩舎)だ。
ワールドプレミアが差し切り勝ちを収めた2年前は、ディアスティマが前半7ハロンのうち5ハロンで11秒台のラップを刻むハイペースで逃げて6着に粘っている。タイトルホルダーがアフリカンゴールドを意識しすぎるあまり、テンで控えるようなら、ディアスティマが積極果敢にハナを切っていってもおかしくはない。
いずれにしてもレース序盤は“逃げ馬”3頭のジョッキーによる心理戦が展開されるだろう。果たして横山和騎手は腹をくくって断固たる逃げを打つのか、それとも控えるのか。今年の天皇賞・春はレース序盤の駆け引きに要注目だ。