「G1出走わずか3頭」日本最高級エピファネイア大失速…サンデーサイレンス、ディープインパクト、「異次元の種付料アップ」に応えてきた“社台神話”が崩壊の危機

撮影:Ruriko.I

 昨年の年度代表馬イクイノックスを中心にG1馬8頭が顔を揃えた25日の宝塚記念(G1)は、春競馬を締めくくるグランプリに相応しい好メンバーが集った。

 そんな中、今や産駒数が限られているディープインパクトが3頭も産駒を送り込んでいる事実には本当に頭が下がる思いだ。

 競走馬としてだけでなく、種牡馬としても日本競馬史上に名を残したディープインパクトは、最終世代で英ダービー馬オーギュストロダンを輩出するなど、最後まで圧倒的な存在感を放ちながら日本競馬の発展に貢献し続けた唯一無二の馬といえるだろう。

 その後を託されたトップサイアーたちも、この春のグランプリに産駒を送り込むだけでなく、皐月賞馬ソールオリエンス(キタサンブラック)、牝馬二冠のリバティアイランド(ドゥラメンテ)、ヴィクトリアマイル・安田記念とG1・2勝のソングライン(キズナ)、大阪杯(G1)を勝ったジャックドール(モーリス)など、他のG1戦線でも存在感を発揮。ドゥラメンテこそ早すぎた他界が惜しまれるが、高額な種付料に見合った産駒の活躍は、今後の種牡馬生活のさらなる繁栄へ繋がるに違いない。

 その一方でこの春、まったくと言って良いほど存在感を発揮できなかった種牡馬がいる。現在国内No.1の種付料1800万円を誇るエピファネイアだ。

 

種付料1800万円、日本No.1種牡馬がまったく存在感なし

「誰ですか?」とは、さすがに言われないかもしれないが、そう言われても仕方ないほど、この春のエピファネイア産駒は大舞台で活躍できなかった。「できなかった」と“過去形”になっているのは、この宝塚記念に同産駒がいないからだ。

 春G1の勝ち星がなかっただけでなく、馬券に絡んだ馬さえゼロ……。それもそのはず、G1出走自体がわずか3頭しかいない上に、最も人気したのがNHKマイルC(G1)のモリアーナで5番人気。皐月賞(G1)のウインオーディン(15番人気)、ヴィクトリアマイルのイズジョーノキセキ(10番人気)に至っては、エピファネイア産駒の存在そのものに気付かなかったファンも少なくないだろう。

 さらに重賞まで範囲を広げても、安田記念が終わって谷間となったエプソムC(G3)をジャスティンカフェが勝って、ようやく2023年の重賞初勝利。言葉を選ばなければ「日本最高の種牡馬にあるまじき体たらく」と言わざるを得ない悲惨な現状だ。

「1000万円だったエピファネイアが一気に1800万円に上がったのが、昨年2022年から。当時は無敗で牝馬三冠を制したデアリングタクトに続いて、年度代表馬になったエフフォーリアが出てくるなど、まさに絶頂期でした。

しかし、そんな栄光の裏で昨年の重賞勝利はイズジョーノキセキの府中牝馬S(G2)のみ。デアリングタクトが度重なる脚部不安に泣き、さらなる活躍が期待されたエフフォーリアも初戦の大阪杯(G1)から大失速してしまい、最後まで輝きを取り戻せませんでした。

一方で、今年もエピファネイアの種付料は据え置きの1800万円と強気のまま。巻き返しが期待されるシーズンですが、ここまでは昨年以上に厳しい結果になっています。

それを象徴しているのが、(種牡馬ごとの産駒の平均収得賞金額の大小を表す)アーニング・インデックス。0.75(19日現在)は、ベスト30まで広げても最低の数値です。昨年9位と、辛うじてベスト10をキープした種牡馬リーディングも、今年は13位まで後退しています。残念ながら勝てない、稼げないでは、来年以降の種付料の暴落は必至でしょう」(競馬記者)

 ここで心配されるのが「絶対的」とさえ言われる社台スタリオンステーションの“神話”崩壊だ。

 種牡馬という面で日本競馬に多大な貢献を果たしてきた社台スタリオンステーションには、現在もエピファネイアやキタサンブラックを筆頭に、豪華絢爛なラインナップが繋養されている。

「社台入り」は日本の種牡馬にとって最高の栄誉であり、例えばG1を3勝して2021年に種牡馬入りしたフィエールマンがブリーダーズ・スタリオン・ステーションに回されるなど、現役時代にG1を何勝もした馬が弾かれてしまうことも珍しくないほどの狭き門となっている。

 それだけの権威と人気を誇っているのも、これまで社台スタリオンステーションで繋養されている種牡馬が、数え切れないほどの成功を勝ち取ってきたからに他ならない。

 その一方でサンデーサイレンスの2500万円に始まり、ディープインパクトの4000万円など、これまで社台スタリオンステーションは周囲が驚くような種付料の値上げを何度も行ってきた。

 だが、その度に看板種牡馬の産駒が悉く大活躍し、周囲の「高過ぎる」「さすがにこれはやりすぎでは」といった“雑音”をかき消してきたのだ。そうして築き上げられたのが、社台が推す種牡馬の仔は走るという“神話”である。

 しかし、このエピファネイアの大不振は、そんな「社台神話」に大きな亀裂を入れるものと言わざるを得ないだろう。

 

7月のセレクトセールで下されるエピファネイアの現在地

 サンデーサイレンス、ディープインパクト、キングカメハメハ……これまで社台が“看板”に定め、社台スタリオンステーションの頂点=種牡馬界の頂点に据えてきた馬たちの産駒は、その名に恥じない活躍を見せた。

 しかし、今後ここからエピファネイアの産駒たちが大ブレイクすることをイメージできる人は、そう多くないはずだ。

 来月の10日、11日には日本最大の競走馬セリ市となるセレクトセール2023の開催が控えている。「日本最高種牡馬」の看板を背負ったエピファネイアの産駒は1歳馬14頭、当歳馬12頭の合計26頭が上場されるが、果たしてどのような評価が下されるだろうか。

 いずれにせよ、これまでのような大成功は期待できなさそうだ。

GJ 編集部

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