戸崎圭太「もう表に出られない」後悔再び? 大本命クラシック候補で賞金加算に失敗、タックルで「過怠金5万円」の痛恨ミス
「我ながら酷いレースをしてしまったんです。本当に情けなくて、どん底に落ちたっていう感じで……」
こちらは『netkeiba.com』で1月に掲載された川田将雅騎手が連載しているコラム『VOICE』での対談で戸崎圭太騎手が、敗れた昨年の毎日杯(G3)のことを振り返った際に残した言葉だ。
日本ダービー(G1)出走を視野に入れていたこのレースで、1番人気ドゥラドーレスに騎乗していた戸崎騎手は、馬群に入ったまま追い出しが遅れ、最後の直線で猛然と足を伸ばしたものの3着に敗戦。ピースオブエイトが逃げ切り勝ちを収めた前残りの展開も仇となったが、賞金の加算に失敗したことでドゥラドーレスの夢は潰えた。
レース後のコメントで「人気に応えられず、申し訳ありませんでした」と謝罪した戸崎騎手だが、当時は「もう表に出られない」くらいに落ち込んだ様子。ただ「ここがどん底ならこれ以上落ちることはないなと、吹っ切れたところがあった」ことが昨年後半の快進撃に繋がったようだ。
しかし、圧倒的1番人気に支持されたレーベンスティール(牡3、美浦・田中博康厩舎)に騎乗した今年のラジオNIKKEI賞(G3)でも再び「申し訳なかったです」と謝罪のコメントを出すことになったのは、戸崎騎手にとっても誤算だったに違いない。
コンビを組んだレーベンスティールは、無敗で皐月賞(G1)を制したソールオリエンスとデビュー戦でクビ差の接戦を繰り広げていた実力馬。前走を5馬身差で圧勝したこともあって、単勝オッズも1.9倍の断然人気に支持されていた。
開幕週で前残りの目立っていた福島の小回りでも、レーベンスティールは過去の4戦で好位抜け出しを決めていたように先行力のある馬。懸念があるとしたら、16頭立て7枠14番の外枠をどう乗るかがポイントだった。
こちらについては戸崎騎手の手腕に委ねられた訳だが、結果的にレース展開と相反した乗り方となってしまった感が否めない。
タックルで「過怠金5万円」の痛恨ミス
「スタートの出は悪くありませんでしたが、戸崎騎手は他の馬を先に行かせて後方待機策を選択しました。快速で飛ばすグラニット陣営の逃げ宣言もあり、こちらについてはペースが比較的流れると考えた可能性がありそうです。
ただマズかったのは馬群に終始囲まれる格好となり、追い出しで後手に回ってしまったことでしょう。他馬が動き出したタイミングでも前が塞がったまま最後の直線を迎え、内を狙うしか選択肢が残っていませんでした。
レーベンスティールが追い出しを待たされている間に末脚を伸ばしたのが、2番手から先頭に立ったシルトホルンと3番手からこれを差し切ったエルトンバローズ。猛然と追い上げたレーベンスティールでしたが、最後は前が塞がって外に切り替えた挙句、バルサムノートにタックル。戸崎騎手には過怠金5万円の処分が下されました」(競馬記者)
「もう少しポジションを取るべきでした。他に迷惑をかけてしまいました」
痛恨のミスをそう振り返った戸崎騎手だが、本人の言う通り「もう少しポジション」を取りに行く競馬を心掛けていれば、馬の力は足りていただけに異なる結果になっていた可能性もあったはずだ。
その一方で、賞金加算に失敗したことはレーベンスティールの秋に影を落とすことにもなりかねない。同じく1番人気で敗戦したフィエールマンが直行した菊花賞(G1)の例はあるが、こちらは2着で賞金加算に成功したからこそ。
先述したドゥラドーレスが夏の北海道で賞金を加算して菊花賞に出走したように、レーベンスティールもどこかで使わなければ、ラスト一冠の道は遠のいてしまう。大本命馬で3着に敗れた戸崎騎手の姿に“あのとき”と同じ印象が重なったファンがいたかもしれない。