武豊とエアスピネルは何故マイルで勝てないのか? 大目標・安田記念(G1)に向け「追い詰められた陣営」によって失われた最大の武器
また、目安としてラスト2ハロン目と1ハロン目のラップを比較し、ラストに向かって加速していれば「青色」、0.1秒差以内でスピードを持続していれば「緑色」、最後にバテて減速していれば「赤色」とした。
わざわざ色分けした理由は「青色」と「赤色」とで調教の意味が大きく異なるからだ。
基本的にラスト1ハロン、つまりはゴールに向かって加速している「青色」は、しっかりと折り合いをつけ、最後に末脚を発揮できるような狙いがある。逆に「赤色」の場合はスタートから飛ばしていき、最後が苦しくなることで馬に粘りと、より全力を絞り出す強い負荷を与える狙いがある。
その上で表を見れば一目瞭然だが、陣営は昨年、基本的に「青色」つまりは「折り合い重視の追い切り」を行っていた。それはエアスピネルにとって不安のある距離に挑戦していたことが要因で、明確な方針が見て取れる。たまにCWの追い切りを混ぜていたのもそのためだ。
だが、菊花賞の最終追い切りでは唯一、2ハロン目よりも1ハロン目が遅くなっている。わずかコンマ1秒の差とはいえ、ここまですべて最後に加速していた追い切りとは一線を画した内容だ。
それは陣営の「勝ちたい気持ちの表れ」とも取れるが、結果的にエアスピネルは、その菊花賞で初めてと述べて良いほど著しく折り合いを欠いた。
そしてマイル路線に矛先を向け、折り合い面の心配が減少した今年になって大きく調教の方針が変わっている。それは表の色合いの分布を見れば明らかだが、高い期待に応えるために赤や緑といった「負荷の高い内容の追い切り」が増え、その代わり折り合いが軽視されるようになった。