武豊とエアスピネルは何故マイルで勝てないのか? 大目標・安田記念(G1)に向け「追い詰められた陣営」によって失われた最大の武器
その方針転換こそがマイル戦でさえ折り合いを欠いてしまう、今のエアスピネルの現状に繋がっているのではないだろうか。
無論、あくまで推測であり、単純にレースを重ねるごとに前向きさが出てくる馬もいる。だが、初めて1週前と最終共に「減速ラップ」となった今回の安田記念の追い切り内容には、陣営の勝利への強い思いを感じながらも、どうしても折り合い面での不安が拭えない。
率直に述べて、同じく坂路で好時計を連発していたミッキーアイルのような、スプリント戦でもスタートから先手を奪えるような馬の追い切りの内容に近いものを感じるのだ。
「先週は一杯やっているので、今週は少し余裕を持たせた調教をしたかったんですけど……これまでは1週前と当該週と違うように(レース当該週のほうは)少し時計に余裕を持たせていたんですが、今回は少し速い時計を出すように指示しました。G1ということもありますが、この馬の性格を考えると『もっと苦しめてやりたいな』ということで。少し馬に苦しい思いをさせて、レースで全力を出せるようにしたいと思いました」
31日に行われた共同会見で笹田和秀調教師は、今回のエアスピネルの最終追い切りの狙いについてそう語っている。勝つための方針ともいえるが、逆に述べれば管理馬にとって「何がベストなのか」をまだ掴めていない証拠ではないだろうか。
確かに追い切りの時計自体は、1週前に一番時計を記録するなど素晴らしいものだったし、陣営のここに懸ける意気込みも充分に伝わるものだった。だが、これが超抜時計ではなく、”懲罰時計”とならなければ良いが……。
早くから掲げてきた大目標を前に「奇策」を弄さねばならぬのが、思うように結果を残せず追い詰められたエアスピネル陣営の現状なのかもしれない。