「幻のダービー馬」を負かした姉の豪脚を彷彿! クラシック目前に「コンビ解消」7年前のリベンジなるか
20日、新潟5Rに行われた2歳新馬戦(芝1800m)は、1番人気アドマイヤベル(牝2歳、美浦・加藤征弘厩舎)と菱田裕二騎手のコンビが、ゴール寸前で2着馬をハナ差捕らえて優勝した。
「すごい加速力でした」
騎乗した菱田騎手がレース後、そう絶賛したのも当然か。アドマイヤベルはスタートで出遅れてしまい、最後方付近の追走を余儀なくされることとなる。同騎手も、当初のプランを変更せざるを得なくなったようだ。
また1000m通過は62秒2のかなりゆったりとしたペースだった上、アドマイヤベルは最後の直線で馬群の大外。内を行く各馬が脚を残していることは想像に難くないだけに、ここから差し切るのは至難の業だと思われた。
だが鞍上のゴーサインが出ると、アドマイヤベルは先述した菱田騎手の言葉通り素晴らしい加速力を披露。メンバー唯一の33秒台となる上がり3ハロン33秒8を繰り出し、ライバル勢をなで斬りにしてみせた。
「相当荒削りなレース内容だったと思いますが、それでも勝ち切ってしまったあたりこの馬の能力の高さでしょう。まだまだ良化が見込めそうですし、来春の牝馬クラシックに向けて非常に楽しみな1頭ではないでしょうか。
ゴール寸前で2着馬を差し切ったシーンは、新馬戦でシルバーステートを差した姉アドマイヤリードの豪脚を彷彿とさせるようなものもありましたね」(競馬誌ライター)
そうライターが話している通り、本馬の姉は2017年のヴィクトリアマイル(G1)を制覇したアドマイヤリードだ。
同馬はデビュー戦で先に抜け出したシルバーステートを、ゴール寸前でアタマ差交わして優勝。主戦だった福永祐一元騎手(現調教師)が「規格外の馬だった」と絶賛し、ファンからも「未完の大器」「幻のダービー馬」などと呼ばれることとなったシルバーステートに唯一土をつけた馬だけに、アドマイヤリードがその後ビッグタイトルを獲得するなど大出世を果たしたのは当然だったかもしれない。
なお、そのアドマイヤリードと3戦目からコンビを組んでいたのが、今回アドマイヤベルの手綱を取っていた菱田騎手である。
初騎乗となった白菊賞(500万下・当時)で勝利に導くと、続く阪神ジュベナイルF(G1)は6番人気9着。同馬は菱田騎手が当時お世話になっていた松田博資元調教師の管理馬であり、デビュー4年目だった同騎手もG1挑戦を前に「恩返しがしたいです」と意気込んでいたが、レースではメジャーエンブレムの前に為す術なく完敗した。
年明けの2016年も引き続き手綱を取ると、チューリップ賞(G3・当時)に出走。収得賞金が心細かったこともあり、ここで何とか桜花賞(G1)の優先出走権を取りたいところだったが、まさかのシンガリ16着に大惨敗……。それと同時に、アドマイヤリードと菱田騎手もコンビ解消となってしまった。
「権利取りには失敗するも、何とか桜花賞の出走枠に滑り込んだアドマイヤリードは、藤岡康太騎手と新コンビを組むと5着に好走。その後の活躍は周知の通りです。
前哨戦で大敗しコンビ解消となった菱田騎手にはその後、アドマイヤリードの手綱が戻ってくることはありませんでした。松田博厩舎が定年で解散したため須貝尚介厩舎に転厩した影響もあったかもしれませんが、同馬のその後の活躍を考えると悔しい思いをしたかもしれませんね」(同)
姉アドマイヤリードとのコンビでは、あと一歩のところでクラシックに参戦することができなかった菱田騎手。果たして、妹アドマイヤベルと7年前のリベンジとなるだろうか。