「追放寸前」無敗の二冠馬全弟がピンチを脱出! 横山武史、D.レーンでも勝てなかった良血馬が滑り込みセーフ…戸崎圭太「最後は力で勝ってくれた」

 先週末に大きな盛り上がりを見せた札幌記念(G2)の開催を終え、夏競馬も9月1週目までの2週を残すのみとなった。9月の後半からラスト一冠に向けた3歳世代のトライアルも始まり、秋の到来を告げる。

 その一方で毎週のように話題に上がるのが、「最後の未勝利戦」というワードだ。

 エリート街道を歩むクラシック候補らに対し、こちらは同じ3歳世代で一度も勝ったことがない馬たちである。

 普段は馬優先のローテーションを組む調教師ですら連戦や連闘も辞さない背景には、勝てなかった馬に過酷な選択肢しか残らないからだ。

 1つ目は地方への移籍で、この場合は2勝すると中央へ戻れる。2つ目は格上挑戦となる1勝クラスに出走すること。3つ目は登録を抹消すること。これ以外にも地方競馬や乗馬、研究馬としての売却や障害練習などもなくはない。馬主や調教師としては、出来ることなら避けたい結論だろう。

「追放寸前」無敗の二冠馬全弟がピンチを脱出!

 そんな岐路に立たされていたのが、テンペスト(牝3、美浦・国枝栄厩舎)だ。

 ロードカナロアを父に持つ本馬の母は日米オークスを制覇した名牝シーザリオ。両親の名前で察しがつくように、2018年のホープフルS(G1)と19年の皐月賞(G1)をデビューから無敗の4連勝で制したサートゥルナーリアの全妹にあたり、半兄に種牡馬として活躍中のエピファネイアもいる超良血馬である。デビュー当初は当然のようにクラシック候補として期待されていた馬だった。

 しかし、昨年12月のデビュー戦で一頓挫あった後、今年1月の初陣で後方から鋭い末脚を繰り出したものの、アタマ差の2着に惜敗。見せ場十分の走りに勝利は時間の問題かと思われたのだが、鞍上にD.レーン騎手を配して確勝を期した2戦でも3着、5着と敗れてまさかの3連敗を喫していた。

 気が付けば中央からの追放寸前となるタイムリミットも徐々に近づき、何としても勝利の二文字を渇望していたのが、土曜新潟6Rの3歳未勝利だった。

戸崎圭太騎手 撮影:Ruriko.I

 結果は最後の直線でスムーズさを欠きながらも内からグイっと一伸びして1着。先に抜け出した2着馬をクビ差交わし、先頭でゴール板を駆け抜けた。これには初騎乗となった戸崎圭太騎手も「道中は左に行く面を見せて、直線では行きたいところに行けなかった」と振り返りつつも、「最後は力で勝ってくれました」と評価。レースレベルはともかくとして、今回のメンバーでは力が違ったということだろう。

 ここまで出走した4戦すべてで、単勝オッズ1倍台の断然人気に支持されているテンペスト。戦前の陣営も「力通りに走ってくれれば」と自信を見せていたように、歯車さえ噛み合えば、まだまだ上を目指せる期待馬だ。最大の危機を滑り込みセーフで切り抜けた超良血馬の今後に注目したい。

高城陽

大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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