“北海道男”横山武史にかかる2つの偉業、「父以来」と「史上3頭目」のW達成に挑む
JRAの夏競馬における大一番・札幌記念(G2)が終わり、気が付けば徐々に秋競馬が近づいてきた。
残り2週となった札幌開催を振り返ってみると、横山武史騎手が17勝を挙げてリーディング首位を快走中。2位のC.ルメール騎手に6勝の差をつけ、3年連続3回目の札幌リーディングに向けて順調な歩みを見せている。
昨年は函館と札幌の“北海道Wリーディング獲得”という快進撃を見せ、今年は函館リーディングこそ佐々木大輔騎手に譲ったものの、相手よりも騎乗回数が35回少なかったにもかかわらず、4勝差の2位だったように、現役屈指の“北海道男”というイメージがすっかり板についてきた。
今年もここまで全国リーディング3位の83勝を挙げているうち、函館と札幌で計31勝をマーク。全体の4割弱を占めるほど“北海道男”ぶりは健在なのだが、その中で気がかりなのが重賞での存在感が薄れている点だ。
最後に勝利を挙げた重賞は6月の函館スプリントS(G3)で、現在のところ7連敗中。先週の札幌記念もシャフリヤールとの新コンビで11着と惨敗を喫している。
自身の初ダービー制覇を阻んだライバルとの共闘は大きな注目を集めたが、「馬場が悪いのは無理でした」というコメントの通り、雨の影響を受けた稍重の馬場はこたえた。加えて、走り終えたシャフリヤールに喉の疾病が判明。早々に手術を受けることが決まったように、様々な面で厳しい戦いとなった。
安定して勝ち星を積み上げながらも、こうしたツキのなさが重なったこともあって、大舞台での勝利から遠ざかっている状況。どこかでトンネル脱出のキッカケとなる勝利が欲しいところだが、その点では今週末の戦いがひとつのポイントとなりそうだ。
「父以来」と「史上3頭目」のW達成に挑む
まずは27日に札幌競馬場で行われるキーンランドC(G3)に、函館SSを制したキミワクイーンとのコンビで参戦。上でも触れた通り、“最後に重賞を勝利した縁の馬”とのタッグとなる。
思えば、函館SSの前も重賞の勝利からは遠ざかっており、4月の皐月賞(G1)を最後に9連敗で迎えた一戦で、横山武騎手を連敗ストップへと導いたのがキミワクイーンだった。
もし今回も連敗ストッパーとなれば、函館SSとキーンランドCという北海道の短距離重賞2連勝となる。過去にこれを達成したのはワンカラットとカレンチャンの2頭だけで、実現すれば史上3頭目という快挙だ。
2011年のカレンチャンはそのまま3連勝でスプリンターズS(G1)を制したように、“北海道スプリント重賞統一王者”として秋の大舞台に弾みをつけることができるか。人馬ともに重要な一戦となる。
また、今週末は土日の2日間に渡って「ワールドオールスタージョッキーズ」(以下、WASJ)も行われる。国内外のトップジョッキーたちが夏の札幌に集い、チーム戦と個人戦を同時進行で行う“騎手の祭典”に、横山武騎手(勝利度数関東1位により選出)もJRA代表メンバーとして参戦する。
初出場だった昨年は下から2番目の13位という悔しい結果に終わっているだけに、今年はリベンジに燃える想いも強いことだろう。自身の庭と言っても過言ではない札幌で、並み居る名手たちを押しのけて表彰台の中央を狙う。
ちなみに、「WASJ」が札幌で現行の条件で実施されるようになった2015年以降の“優勝騎手”は以下の通り。
第1回(2015年) J.モレイラ(WAS選抜/香港)
第2回(2016年) M.デムーロ(JRA選抜/栗東)
第3回(2017年) E.ダシルヴァ(WAS選抜/カナダ)
第4回(2018年) C.ルメール(JRA選抜/栗東)
第5回(2019年) 川田将雅(JRA選抜/栗東)
第6回(2022年) 武豊(JRA選抜/栗東)
過去6回のうちJRA選抜からは4人の優勝騎手が出ているが、全員に共通するのが「栗東」の所属だったということ。
そこで「美浦」所属騎手の優勝を調べてみると、「ワールドスーパージョッキーズシリーズ」として行われた2009年の横山典弘騎手が最後。横山武騎手には父以来で14年ぶり、「WASJ」となってからは初となる“美浦所属騎手の優勝”にも期待がかかる。
得意としている札幌でWの偉業を成し遂げ、嫌な流れを断ち切って良い形で秋を迎えることができるか。今週末はホームで世界の強豪たちを迎え撃つ“北海道男”・横山武史の手綱さばきに注目だ。