イクイノックス「引退」に影響及ぼしたダービー馬の惨敗…目標はアーモンドアイ超えの歴代獲得賞金1位も、まずはドウデュースとの「最強対決」に全力

シャフリヤール 撮影:Ruriko.I

「スーパーG2」に相応しい豪華メンバーが顔を揃えた今年の札幌記念(G2)は、2着トップナイフに4馬身差をつけたプログノーシスの圧勝で幕を閉じた。

 連覇を期待されたジャックドールは1番人気に支持されたものの、好位から伸び切れずに6着。天才武豊騎手の手腕を持ってしても、「今日は力を出せなかった感じ」と振り返らざるをえない敗戦でもあった。馬場状態の発表こそ稍重だったが、レース後に各騎手が口々に「馬場が悪かった」と振り返ったように、この日の札幌は想像以上にパワーとスタミナを要求されるコンディションだったのかもしれない。

 スピードと瞬発力が売りのディープインパクト産駒でありながら、これを全く問題としなかったプログノーシス陣営にとっては嬉しい誤算となった。

 これに対し、同じくディープインパクト産駒のシャフリヤール(牡5、栗東・藤原英昭厩舎)は、勝負どころとなった3コーナー付近でズルズルと後退。レースで手綱を取った横山武史騎手が「馬場が悪いのは無理でした」と振り返っていた一方で、獣医師による診断の結果、喉頭蓋エントラップメントを発症していたことが判明。手術を受けるようで、遠征を予定していたブリーダーズC(G1)の参戦は事実上の白紙となりそうだ。

「戦前から横山武騎手の評価は芳しくなかったですし、最終追い切りで何とか体裁を保つ状態に来た感もありました。この日の札幌はスコールのような雨の影響で馬場が悪化と運もなかったですね。勝負どころでは既に手応えはなく、最後の直線は馬なりで入線していました。

シャフリヤールは日本ダービー(G1)やドバイシーマクラシック(G1)を勝って血統背景も抜群。ノーザンファームの青写真では古馬になって更に勲章を獲得し、来春から大々的に種牡馬入りする予定でしたが、精彩を欠く近走の内容で軌道修正をする必要が出てきました」(競馬記者)

イクイノックスの動向に影響か…

イクイノックス 撮影:Ruriko.I

 また、本馬の引退が流動的になったことで、イクイノックス(牡4、美浦・木村哲也厩舎)の動向に変化があるかもしれないという。

「現役世界最強馬に上り詰めたイクイノックスは、秋の結果次第で年内に引退してもおかしくなかったのですが、関係者からシャフリヤールと種牡馬デビューを被らせたくないという噂も聞きました。ただ、イクイノックスの種牡馬としての価値は、既に十分な評価を得ている状況。

今年に関しては日本の歴代獲得賞金ランキング1位を目指しているため、秋の海外遠征は選択肢に入っておらず、報奨金の出るジャパンC(G1)を目標に据えたローテになりました。これからさらに箔をつけるなら欧州の凱旋門賞(仏G1)や、思い切ってダートのブリーダーズCクラシック(米G1)やドバイワールドC(G1)くらいしかないでしょう」(同)

 現在の日本の歴代獲得賞金ランキングは、芝G1・9勝を挙げたアーモンドアイが19億1526万3900円で1位。イクイノックスは14億8918万8100円のため、約5億円の開きがあるとはいえ、連勝が続くようなら年内の逆転にも期待できそうだ。

 だが、シャフリヤールの先行きが分からなくなったため、年内引退と現役続行の結論はまだ出ていない様子。さらにビジネスの側面で考えた場合、レースで稼ぐ賞金と種牡馬入りして稼ぐ金額では桁が違ってくる。

 かといって現役を続ければ万が一の事故などもあり得るわけで、そういったリスクを考えると悩ましいところでもある。管理する木村調教師も常々「これだけの馬なのでとにかく無事に牧場に帰す事が一番」と語っているイクイノックス。とりあえずはダービーで敗れた最強の敵ドウデュースと激突する秋の結果次第だが、シャフリヤールの惨敗と疾患の判明は、ノーザンファームの思惑に様々な影響を及ぼすことになるのではないか。

高城陽

大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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