三浦皇成「痛恨」の敗戦にがっくり…「勝たせてあげたかった」ナイスネイチャ、サウンズオブアースを彷彿とさせる「善戦マン」が引退の崖っぷち
古くはナイスネイチャやステイゴールド……最近ではサウンズオブアースやボルドグフーシュなど、競馬界にはいつの時代も華やかなスターがいる一方で、どうしてもその引き立て役になってしまう「善戦マン」と呼ばれる存在がいる。
彼らの最大の特徴は、とにかく「勝利が遠い」ことだ。
例えば、G1で3度の2着を誇るサウンズオブアースだが、通算成績は30戦で2着が8回もある一方で、勝利はわずか2回。主な勝ち鞍は1勝クラスのはなみずき賞だ。
現役トップホースと幾度となく接戦を演じるなど、その能力は誰もが認めるところ。だが、いざ自分が主役になると、何故かいつも別の主役が現れて勝利を攫われる……。「このメンバーなら勝てるだろう」「このメンツには負けられない」「今回こそライバルを逆転するのでは」といった期待をかけられながらも、ゴール前で“いつも通り”の着順に収まってしまう彼らを何度見てきただろうか。
だが、そんな善戦マンたちも、一度は“自分の殻”を破って勝利を手にしている。
競走馬にとって「1勝」することが極めて大きな意味を持つことは、競馬ファンの多くが知っていることだろう。冒頭に挙げたナイスネイチャも、ステイゴールドも、サウンズオブアースも、ボルドグフーシュもこの課題をクリアできたからこそ、後にファンに語り継がれるようなキャリアを築き上げることができたのだ。
今週末には今年最後の3歳未勝利が行われ、生き残りをかけた崖っぷちの馬たちが“最後の椅子”を取り合った。そんな中で、最後まで善戦マンを抜け出すことができなかったのが、ハルオーブ(牡3歳、美浦・武井亮厩舎)だ。
16戦して2着7回、3着3回。3着以内率62.5%は、ナイスネイチャやステイゴールドなどと比較しても遜色ない安定感。だが、ハルオーブは2日の新潟6Rで5着に敗れ、ついに未勝利を勝ち上がることができなかった。今後は引退、地方移籍などの厳しい選択を迫られる。
「なんとか勝たせてあげたいと思っていたのですが……」
レース後、そう肩を落としたのは三浦皇成騎手だ。16戦中15戦で手綱を握った主戦騎手だからこそ、その言葉には重みがある。
背に腹は代えられぬ前走から中1週の強行軍だったが、三浦騎手は「返し馬のフットワークは一番いいくらい。スタッフに感謝です」と陣営をねぎらった。だが、「あと1ハロンで脚が上がってしまった」との言葉通り、彼らにとって不幸だったのは得意の1400mではなく、1600mのレースしか選択できなかった点だろう。
「陣営もブリンカーを使ってみるなど、あの手この手で『なんとか1勝を』と頑張っていたのですけどね……。前走2着の際も、三浦騎手は『前が開けた時は勝ったと思った』と悔しそうでした。正直、ここまで苦戦する馬ではないと思っていましたし、近しい関係者も上のクラスでも戦える馬と評価していたのですが。改めて、競馬で1つ勝つことの難しさを実感せざるを得ません」(競馬記者)
そう語った記者がハルオーブを初めて見たのは、昨年の夏だったという。
デビュー戦2着という結果を受けて迎えた未勝利戦でハルオーブは1番人気に推されるも、結果はまたも2着。最後の最後でクビ差だけ競り負ける紙一重の結果だったが、勝ったリバーラは次走のファンタジーS(G3)で重賞初制覇を飾り、阪神ジュベナイルF(G1)にも出走した。
「ほんの少しのことだと思うのですが、勝った馬と勝てなかった馬で、その後に歩む道が大きく分かれてしまうのが競馬。もし(昨年8月の未勝利で)ハルオーブがリバーラに競り勝っていれば、リバーラのファンタジーS勝利はなかったでしょうし、逆にハルオーブはもっと出世していたかもしれません。
残念ながら、今年の3歳未勝利は今週で終わりですが、そう思うとハルオーブは本当に惜しい馬ですし、なんとか1勝クラスに格上挑戦してでも中央で現役を続けてほしいですね。勝ち味に遅いですが、相手なりに力を出せるタイプなので上のクラスでも戦えるはずです」(同)
ちなみにハルオーブは一口馬主クラブのヒダカ・ブリーダーズ・ユニオンにて総額1000万円(5万円×200口)で募集されていた馬。16戦して未勝利に終わってしまったが、総賞金は2000万円を超えている。
これだけでも十分貢献したと言えるかもしれないが、現役を続けることでもっと大きな“馬主孝行”ができるはず。ナイスネイチャやステイゴールドらに代表されるように、ファンから愛される善戦マンを目指してほしい。