最低人気勝利で単勝3万2810円、単勝1倍台で飛んだ馬、3連闘の執念もあと一歩…悲喜こもごもの未勝利戦ラストウィーク
先週末の開催で夏競馬が終了、今週から中央場所(関東は中山、関西は阪神)へと舞台が移る。9月末から年末まで続く「G1ロード」の幕開けでもあり、秋競馬の到来を楽しみにしていたファンも多いだろう。
ただ、競馬関係者にとって夏競馬の終わりは、1年でもっともヒリヒリする時期でもある。なぜなら最後の未勝利戦の終了も意味するからだ。この週までに勝てなかった馬は、格上挑戦での逆転を目指すか、地方への移籍など、次の「馬生」を決める究極の選択をしなければならない。それだけに生き残りをかけて、熾烈なレース、駆け引きが行われ、そこには数々のドラマも生まれる。
今年の最終週でもっともインパクトを残した未勝利戦は3日の新潟4R(芝2200m)だろう。
勝ったのは18頭立ての最低人気馬、単勝オッズ328.1倍のケイツークローン。1枠1番から好発を決めると、内ラチ沿いをスルスルと逃げ、最後は追いすがる1番人気馬をクビ差しのいだ。鞍上は今年2年目の若手、水沼元輝騎手。同馬はデビューから9戦、掲示板にも載ったことがなく、加えてここ4走は全て2桁着順。最低人気もうなずける戦績だった。陣営は同馬の未勝利戦終了後を見据えて障害練習を行い、加えて初ブリンカーで挑み、今年の単勝式最高配当につなげた。こういうことが起こるから、競馬は面白い。
最低人気で勝つ馬がいれば、単勝1倍台で敗れた馬もいる。大波乱の前日新潟6R(芝1600m)に出走したエンパイアブーケ。全姉がG1・2勝のメジャーエンブレムという良血で、過去2戦を4着、3着の堅実さと、川田将雅騎手の騎乗も加味されたのだろう。単勝1.9倍の支持を集めた。
しかし、新潟の長い直線で思ったほど伸びず4着。ちなみにこのレースの2番人気は三浦皇成騎手が騎乗のハルオーブ。これまで15戦して【0-7-3-5】、前走も2着と、惜しい競馬が続いていた。三浦騎手は15戦中14戦で手綱を取っているだけに、ぜひとも、勝たせたかったハズだ。最後の直線で先頭に立つシーンもあったが、最後に力尽きてエンパイアブーケに次ぐ5着。悲願はかなわなかった。
3連闘もまさかの3連続2着…
一方、小倉に目を向けると、初勝利を目指した2連闘はおろか、3連闘する馬も珍しくない。2日の6R(ダート1000m)に出走したカナウは8月20、26日と2週続けて同条件のレースで2着、そして3連闘で挑んだこのレースでは減量の恩恵がある新人、田口貫太騎手を起用したが、まさかの3戦連続の2着、陣営としては泣くに泣けぬ結果となってしまった。
中央競馬では例年、1世代で勝利できる馬は約3割といわれている。残りの7割は引退か、地方競馬への転出、あるいは中央競馬にそのまま在籍し、未勝利の身で1勝クラスにチャレンジする馬もいる。いずれの道も馬主や調教師の判断となる。
競馬の1年のサイクルは「ダービーからダービー」、あるいは「1年の計は金杯にあり」ともいわれるが、競馬関係者、とくに調教師や馬主にとっては、夏競馬の終わりが1年の大きな区切りであることも間違いない。