【スプリンターズS(G1)展望】新王者誕生へ、浜中俊×ナムラクレアが堂々主役! 夏王者ジャスパークローネ×団野大成は勝てば岡部幸雄以来の大記録

ナムラクレア 撮影:Ruriko.I

 10月1日、中山競馬場では秋のG1シーズン開幕戦・スプリンターズS(G1)が行われる。昨年覇者ジャンダルムと、今春のスプリント王に輝いたファストフォースはすでに現役を引退。この一戦で新たな王者誕生が待たれる。

 今年は3頭のG1ウイナーが出走を予定しているが、主役を務めるのはG1未勝利のナムラクレア(牝4歳、栗東・長谷川浩大厩舎)だろう。

 1番人気に推された前走のキーンランドC(G3)はスタートを決めて、中団を追走。勝負所で早めに進出を開始すると、4角4番手から直線大外を突き抜けた。

 これまで14戦して掲示板を外したのは、8着に敗れた2走前のヴィクトリアマイル(G1)のみと、とにかく堅実なナムラクレア。重賞4勝の他、今年の高松宮記念(G1)で2着、昨年の桜花賞(G1)でも3着に入るなど、G1でもたびたび好勝負を演じている。例年に比べると、やや小粒な印象もある今年は1番人気に支持される可能性が高そうだ。

 21日に栗東CWで行われた1週前追い切りは、浜中俊騎手を背に併せ馬。僚馬を追走する形で直線を迎えると、馬なりで並びかけ、ラスト1ハロン11秒3で1馬身先着した。

 6ハロンの全体時計は81秒8。理想的な加速ラップも踏んでおり、「いい状態で本番に向かえそう」と浜中騎手も自信を見せている。同騎手は、2019年にロジャーバローズで制した日本ダービー以来のG1制覇を狙う。


 レース展開のカギを握るのは、重賞2連勝中のジャスパークローネ(牡4歳、栗東・森秀行厩舎)だろう。

 今年5月に新潟千直で3勝クラスを勝ち、オープン入りを果たしたが、直後の函館スプリントS(G3)は最下位16着に敗れ、重賞の壁に阻まれた。

 ところが、団野大成騎手と初コンビを結成して臨んだCBC賞(G3)をまんまと逃げ切り。さらに北九州記念(G3)も前半3ハロン32秒9のハイラップを刻むと、そのまま逃げ切ってしまった。

 近2走は人気もそれほどなく、楽逃げの形となった部分もあったが、力をつけているのもまた事実だ。過去10年でハナを切った馬は「0-3-1-6」の成績。逃げ切った馬こそいないが、半数近くの逃げ馬が馬券には絡んでいる。今回も単騎逃げが叶えば、粘り込みがあってもおかしくない。

 団野騎手はファストフォースで今春の高松宮記念を制覇しており、同年に異なる馬で春秋スプリントG1を勝つことになれば、1997年岡部幸雄元騎手(シンコウキング、タイキシャトル)以来、史上2人目となる。


 北九州記念でジャスパークローネを半馬身差まで追い詰めたママコチャ(牝4歳、栗東・池江泰寿厩舎)も勝てるだけの能力を秘めた1頭である。

 デビューからマイル路線を歩んでいたが、オープン昇級初戦のターコイズS(G3)で5着、さらに今年の阪神牝馬S(G2)でも9着と結果を出せなかった。そこで陣営は距離短縮を決断。2走前に1400mの安土城S(L)を完勝すると、続く北九州記念で初めてのスプリント戦に対応し、賞金加算にも成功している。

 ソダシの妹がついにたどり着いたG1舞台。鞍上は近2走で手綱を取っていた鮫島克駿騎手ではなく、川田将雅騎手が起用された。重賞未勝利馬が、初コンビでG1制覇を遂げるか。


 続いては大挙7頭が登録しているセントウルS組から3頭挙げておきたい。

 まずは前走で15頭立ての14番人気ながら、見事な逃亡劇を見せたテイエムスパーダ(牝4歳、栗東・木原一良厩舎)だ。

 近走はハナを切れない不本意な競馬が続いていたが、前走は何が何でも行く構えを見せると、開幕週の高速馬場も味方につけた。

 今回は開催4週目となる中山の馬場状態もポイントにはなるが、何よりテンのスピードで勝るジャスパークローネとのハナ争いを制することが激走の条件となる。いずれにしてもこの2頭によるハナ争いは激化することが予想される。


 ハイペースになれば、セントウルS(G2)で4角12番手から2着に追い込んだアグリ(牡4歳、栗東・安田隆行厩舎)が浮上する。

 今年は4連勝で2月の阪急杯(G3)を制覇。続く高松宮記念でも3番人気に支持されたが、道悪に加えて直線での不利も響いて7着に敗れた。

 海外遠征を経て臨んだ前走は、横山典弘騎手との初コンビで2着。それまでの先行競馬から一転、後方に控えると、上がり32秒4の豪脚を駆使する新たな一面を見せた。引き続き手綱を握る55歳の大ベテランはどんな位置取りを見せるかにも注目だ。


 2年前の当レース覇者で、前走のセントウルSは8着に敗れたピクシーナイト(牡5歳、栗東・音無秀孝厩舎)もまだ見限れない。

 長期休養明けの近3走は13着、8着、8着。着順だけ見ると、今回は大きく人気を落としてもおかしくない。ただ、レース内容は徐々に良化している。特に前走はスタートで出遅れたものの、最後はいい脚を使っていた。今回はしっかりとスタートを決めて、2年前のような先行競馬ができれば、久々の美酒を味わう可能性も十分ある。


 重賞ウイナーの牝馬3頭も虎視眈々と上位を狙う。

メイケイエール 撮影:Ruriko.I

 メイケイエール(牝5歳、栗東・武英智厩舎)は、重賞6勝の実績馬で、昨年の当レースと今年の高松宮記念では1番人気に支持された。しかし、国内G1では直近3戦全てが2桁着順の惨敗続き。そのため今回はかなり人気を落としそうだ。“気まぐれお嬢様”がここで奇跡の激走を見せるか。

 オールアットワンス(牝5歳、美浦・中舘英二厩舎)は、1年ぶりの実戦となった今夏のアイビスサマーダッシュ(G3)を勝利。2年ぶりに千直女王に返り咲いた。一度叩かれた上積みで穴をあけても不思議ではない。

モズメイメイ 撮影:Ruriko.I

 モズメイメイ(牝3歳、栗東・音無秀孝厩舎)は、コンビ3戦3勝の好相性を誇る武豊騎手との再タッグ。2走前の葵S(G3)で見せた“ロケットスタート”を再現できれば、ジャスパークローネとテイエムスパーダより前で競馬を進める可能性もありそうだ。


 この他にも今年の函館SSを制したキミワクイーン(牝4歳、美浦・奥村武厩舎)、春雷S(L)で同馬を破ったマッドクール(牡4歳、栗東・池添学厩舎)、昨年の当レース2着馬ウインマーベル(牡4歳、美浦・深山雅史厩舎)なども出走を予定している。

 馬場、枠順、展開によって、どの馬が馬券に絡んでもおかしくない混戦模様のスプリンターズS。発走は10月1日、15時40分を予定している。

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