「56キロ」減量失敗から1か月半…古巣で心機一転「45歳ベテラン」が好騎乗連発で復活の狼煙!
16年前の菊花賞(G1)で1番人気の重圧を味わったこともあるベテラン騎手が復活に向けて前進している――。
アサクサキングスが勝利した2007年の菊花賞で、1番人気ロックドゥカンブに騎乗していたのは当時29歳の柴山雄一騎手だった。
前哨戦のセントライト記念(G2)を完勝し、4戦4勝で菊花賞に出走したロックドゥカンブと柴山騎手。人馬ともにG1初制覇の大きなチャンスを迎えていた。ところが、それまで先行策で勝ち進んでいた馬がこの日は中団後方からの競馬。直線で末脚を伸ばしたが、前を行く2頭(アサクサキングス、アルナスライン)を捉えきれず、惜しくも3着に敗れた。
当時、地方の笠松からJRAに移籍して3年目の柴山騎手にとって逃がした魚は大きかった。その後もコンスタントにG1に騎乗する機会はあったが、結局、悲願を果たせないまま十数年の月日だけが流れた。
15年には72勝を挙げた柴山騎手だったが、その2年後の17年には25勝まで激減。騎乗機会を求めて美浦から栗東に移籍したのは20年春だった。
しかし、ちょうどコロナ禍が世界を震撼させた時期と重なり、“営業活動”にも支障があったはずだ。新天地でも満足な結果を残すことができず、21年からの年間勝ち鞍は9→6→5と推移している。
「56キロ」で減量を失敗…
そんな柴山騎手をアクシデントが襲ったのは今年9月の札幌。“減量失敗”のため、予定のレースに騎乗できず、2日間の騎乗停止処分を受けたのだ。しかも、56キロで騎乗できなかったこともあって、「この斤量で騎乗できないなら、もう引退しかないんじゃ……」などファンからも現役続行を心配する声も飛んだ。
その後、柴山騎手は『競馬ラボ』で連載している自身のコラム内で、体重調整失敗の原因を「レース前日夜から腹痛が始まり、息苦しく吐き気も出てきて、汗取りができなかった」(9月8日付)と告白。「検査の結果、今回は胃潰瘍でした」(同)と綴った柴山騎手は遠征先の札幌から本州に戻り、治療に専念した。
そして、柴山騎手が大きな決断を下したのは、その数週間後のことだ。
コラムに「この秋は美浦へ行ってみることにしました」(9月29日付)と記した柴山騎手。心機一転、かつて所属していた美浦に戻って再スタートすることを宣言した。
「どうやら蛯名正義調教師からの声掛けがきっかけの一つだったようです。栗東へ移籍後は成績もさらに低迷しており、騎乗馬の確保にも苦労していた様子でしたからね。約15年間過ごした“古巣”で再出発するという選択肢はタイミングとしても間違っていないと思います」(競馬誌ライター)
柴山騎手は今月15日に約2か月ぶりとなる実戦に復帰。その週は僅か1鞍だったが、蛯名正厩舎のオブデュモンドに騎乗を果たした(12頭立て10着)。
そして存在感を示したのは復帰2週目となった先週末(21~22日)である。土日に1鞍ずつ騎乗した柴山騎手は、土曜に蛯名正厩舎の2歳新馬メイショウソムリエを10番人気ながら2着に導くと、日曜には最低16番人気の9歳馬ヤマニンバンタジオをあと一歩で掲示板という6着に持ってきたのだ。
「(先週末は)両レースとも馬の力を最大限に発揮させる好騎乗でしたね。体調さえ万全ならまだまだ乗れるところを示せたので、今後は騎乗依頼の増加も期待できるかもしれません」(同)
競馬ラボのコラムタイトル「Starting Over」の如く、45歳のベテランは再出発を切った。果たして3年半ぶりの古巣で完全復活を遂げることはできるか。