「勝ちにこだわるなら」リーディング厩舎が天皇賞・秋(G1)に送る刺客! 綿密に計算された勝利へのシナリオ
先週21日に東京競馬場で行われた富士S(G2)の結果を見て、陣営はほくそ笑んでいたのではないだろうか。
1年7カ月ぶりの勝利を飾ったナミュールが叩き出した1:31.4は、従来のタイムを0.3秒更新するレースレコード。つまり、現在の東京競馬場は絶好のコンディションであり、今週末29日に行われる天皇賞・秋(G1)も、「超」がつく高速馬場で行われることが濃厚になったからだ。
そんな中、「パンパンの良馬場でやりたい」と高速馬場を歓迎するのが、ガイアフォース(牡4歳、栗東・杉山晴紀厩舎)の杉山晴調教師だ。
その発言には明確な根拠がある。天皇賞・秋といえば、毎年のように高速決着することでも有名なレースだが、2011年にトーセンジョーダンが叩き出した1:56.1は、未だ破られていない芝2000mの日本レコードだ。
その一方で、昨夏1:56.8という極めて優秀な時計を叩き出したガイアフォースは小倉・芝2000mのレコードホルダーであり、今回の天皇賞・秋の出走馬の中でも持ち時計はNo.1。先週同様、レコードに迫る超高速決着になれば“実績”がモノを言う。
イクイノックスとドウデュースの対決が大きな注目を集めている天皇賞・秋だが、「2強」がお互いをけん制し合えば、思わぬ伏兵の台頭があるかもしれない。レコードが出るような超高速決着では、一瞬の踏み遅れが致命傷になるからだ。
また、鞍上の西村淳也騎手も杉山晴調教師も2強を出し抜く“予行演習”は終えている。
綿密に計算された勝利へのシナリオ
今月8日に行われた毎日王冠(G2)は、1番人気が単勝2.0倍のソングライン、2番人気が同2.9倍のシュネルマイスターと完全に2強のレースだった。しかし、結果は単勝17.5倍の4番人気エルトンバローズの勝利。好位から早めに抜け出すと、最後は2強の猛追を「ハナ+ハナ」でしのぎ切っている。
見事な積極策で大接戦を制した後「(写真判定を)神様にお祈りしていました」とおどけたのは、何を隠そう西村淳騎手その人であり、エルトンバローズを管理する調教師もまた杉山晴調教師。
実績上位の2強を出し抜いた会心の勝利は、2人の頭の中にまだ残っているはずだ。
「ガイアフォースは2歳の新馬後に骨折した影響もあって、これまでずっと坂路で調整されてきましたが、ここに来てコース追いを解禁。西村淳騎手も『(コース追いの)走りが良い』と好感触だったようです。同世代のイクイノックス、ドウデュースの2強は強いですが、“色気”は持っていると思いますよ。
また西村淳騎手と杉山晴調教師が勝利した毎日王冠は、東京・芝1800mという天皇賞・秋に近い条件で行われ、奇しくもエルトンバローズは12頭立ての6番枠、天皇賞・秋のガイアフォースが11頭立ての5番枠とシチュエーションも似通っています。
今回もほぼ間違いなく2強より前からの競馬になるでしょうし、ジャイアントキリングの再現を狙っているでしょうね」(競馬記者)
イクイノックス、ドウデュースを筆頭に豪華メンバーが揃った天皇賞・秋だが、「勝ちにこだわるなら2000mぐらいがベスト」と杉山晴調教師の勝利への執念は消えていない。今年これまで46勝を挙げ、リーディングをひた走る勢いを大舞台でも見せつける。