エリザベス女王杯(G1)は隠れ実力派の「1勝馬」に妙味あり!コース下見は「38馬身差」で“未遂”も…実力はハーパーと互角!?
12日に京都競馬場で行われる今年のエリザベス女王杯(G1)は、15頭立ての一戦。連覇を狙うジェラルディーナや、前哨戦の府中牝馬S(G2)を逃げ切ったディヴィーナなど楽しみなメンバーがそろった。
過去10年で2勝を挙げている3歳馬だが、今年は3頭がスタンバイ。三冠牝馬のリバティアイランドは2週間後のジャパンC(G1)参戦で不在となったが、ローズS(G2)2着のブレイディヴェーグ、オークス(G1)2着のハーパー、昨年の阪神ジュベナイルF(G1)2着のシンリョクカが虎視眈々と初のG1タイトルを見据えている。
3頭の中で人気を集めているのは、実績的には3頭中3番目といえるブレイディヴェーグと実績最上位のハーパーだ。土曜17時半時点の前日最終オッズを見ると、前者は歴戦の古馬を押しのけて1番人気に、後者はジェラルディーナからやや離された3番人気に推されている。
キャリア4戦のブレイディヴェーグは、素質の高さが評価されての人気。前走のローズSは2着に敗れたものの、まだ底を見せておらず、ここを勝って打倒リバティアイランドに名乗りを上げる可能性は十分あるだろう。
一方のハーパーは前走の秋華賞(G1)でリバティアイランドとマスクトディーヴァにやや離されて3着に敗れたが、ひと叩きされ気配は上昇。1ハロンの距離延長と、内回りから外回りへのコース替わりも歓迎材料といえる。
隠れ実力派の「1勝馬」に妙味あり!
そんなブレイディヴェーグとハーパーの陰に隠れる形で、12番人気の伏兵に留まっているのが、1勝馬のシンリョクカ(牝3歳、美浦・竹内正洋厩舎)だ。
思い返すと、昨年12月の阪神JFは、キャリア1戦の身でリバティアイランドの2着に激走。そのレースで女王との着差は0秒4だった。ハーパーが牝馬三冠レース全てでリバティアイランドに0秒5以上の差をつけられていることを踏まえれば、実力は「シンリョクカ≒ハーパー」と考えられなくもない。
実際に両者が対戦した桜花賞(G1)とオークスは、いずれもハーパーが先着しているものの、桜花賞が0秒1、オークスが0秒3と、その差は僅かだった。
ではなぜ今回、両者のオッズに大きな開きが生まれたかというと、シンリョクカが前走の府中牝馬Sで10着に大敗したからに他ならない。
秋華賞との両睨みだったシンリョクカは、陣営が最後まで迷った結果、前日の府中牝馬Sに出走。3番人気に支持されたが、中団から特に見せ場を作ることもなく敗れた。
ただハーパーと同様に、休み明けを一度使われたことで一変の可能性は十分ありそうだ。前走はプラス20kgで馬体にもまだ余裕があるように見えた。今回は京都への長距離輸送もあるため、太目残りの心配はいらないだろう。
また鞍上が吉田豊騎手から木幡初也騎手に乗り替わるのも不気味である。
これまで5戦中4戦で手綱を取ってきた吉田豊騎手には実績的に大きく劣る木幡初騎手だが、普段の調教でシンリョクカに騎乗することもあるという。何より阪神JFで2着に導いたのが同騎手だったことを忘れてはいけない。
ただ、木幡初騎手は10年目の中堅ながらG1レースへ騎乗するのは今回がまだ3度目。また、美浦所属ということもあって、実は京都競馬場ではこれまで一度も騎乗したことがなかった。
しかし、そんな不安をかき消そうと、シンリョクカの由井健太郎オーナーと竹内調教師が土曜の5R・2歳新馬(芝1800m)にユイノアカゾナエを出走させ、木幡初騎手にコースを経験させる“お膳立て”を行った。1鞍だったが、本番と同じ京都の外回りコースで実戦を経験できたのは木幡初騎手にとっても大きいはずだ。
木幡初騎手は、最終追い切り後の共同会見で「京都の外回りコースは特徴的なコースになるので、事前に下見をして、しっかりとコースを頭に入れて、その中で馬のポテンシャルを活かせるような競馬ができればなと思っています」と話していたが、実は事前の下見は“ほぼ未遂”に終わっている。
「エリザベス女王杯と同じ外回りで予行演習になると思いきや、ユイノアカゾナエは序盤から馬群について行くのがやっとという状況。最後は勝ち馬から6秒4差(約38馬身差)のシンガリ負けを喫しました。それでも京都特有の3コーナーの坂の上り下りや馬場の状態を確かめられたことは決してマイナスにはならないはずです」(競馬誌ライター)
先述した通り、その実力はハーパーとほぼ互角。前走の大敗だけで見限るのは早計だろう。ここは昨年の阪神JFで高配当をもたらした10年目の中堅騎手の可能性に懸けてみるのも一手ではないか。