【ジャパンC】イクイノックス×リバティアイランド「パンサラッサ電撃参戦」どちらに有利? カギを握る川田将雅の「姿勢」とは
「逃げるだけ。バテたら仕方ないという気持ち」
22日、ジャパンC(G1)に出走するパンサラッサ(牡6歳、栗東・矢作芳人厩舎)の最終追い切りを見届けた矢作調教師の口を突いたのは、堂々の逃げ宣言だ。また、これには『東京スポーツ』の取材を受けた主戦の吉田豊騎手も「こっちはその競馬しかない」と同調。現役屈指の逃げ馬タイトルホルダーも参戦するが「他の馬関係なしに」と不退転の構えだ。
戦前の逃げ宣言は、当然ながら他陣営へのけん制の意味も含まれている。こうなってくると、タイトルホルダーにとってはライバルのハナを叩いてでも逃げるリスクが大きくなる。パンサラッサを先に行かせて2番手から優勝した昨年の宝塚記念(G1)のように、まずは“泳がせてみる”のが無難か。
いずれにせよ、稀代の逃げ馬パンサラッサの参戦は、今年のジャパンCの「流れ」に大きな影響を与えることは間違いない。
今回の2400mは自他ともに距離がやや長いことは否めないものの、だからといってあまり楽に泳がせ過ぎると危険な有力馬であることは実績が示す通り。7番人気の伏兵だった昨年の天皇賞・秋(G1)では、最終的にイクイノックスと1馬身差の2着と見せ場十分の逃げだった。今週まで出否が未定だった強力なペースメーカーの登場で、今回のジャパンCがより締まった流れになることは間違いないだろう。
その上で注目したいのが、このパンサラッサの参戦がイクイノックスとリバティアイランドの「どちらに有利に働くか」という点だ。
まず前提条件として、昨年の宝塚記念の1000m通過が57.6秒、天皇賞・秋が同57.4秒とパンサラッサが逃げる以上、レースは必然的にハイペースになる可能性が高い。距離に不安があるだけに少しペースを落としたいところだが、それは2番手濃厚のタイトルホルダーが許さないだろう。吉田豊騎手は、これまで通りの腹を括った逃げを見せてくれるはずだ。
「自分はイクイノックスに追い風になると思います。やはりパンサラッサが実際に逃げた昨年の天皇賞・秋を勝っている点が大きいですし、異次元の強さを見せた今年の天皇賞・秋でもジャックドールが1000m通過57.7秒と外連味のない逃げを見せたことが、イクイノックスの強さをより際立たせました。
イクイノックスも素晴らしい切れを持っていますが、リバティアイランドはデビュー戦でJRA史上最速タイとなる上がり3ハロン31.4秒を記録したような稀代の切れ者。スローの瞬発力勝負では分が悪くなるイクイノックス陣営にとって、厳しいペースを作ってくれるパンサラッサ参戦は歓迎材料だと思います」(競馬記者A)
その一方で、リバティアイランドにとっても歓迎する点があるという。
カギを握る川田将雅騎手の「姿勢」とは
「主戦の川田将雅騎手も『久々に挑戦者になる』と話していた通り、レースではリバティアイランドがイクイノックスをマークする形になると思います。つまりイクイノックスが前で、リバティアイランドがその後ろになるわけですが、後者からすれば気になるのが他の馬による紛れ。戦前に囁かれていた少頭数ならまだしも、フルゲートが濃厚な現状では思い通りにマークするのが難しくなってきます。
その点、パンサラッサが参戦すれば少なくともスローの団子状態ということは避けられそう。ペースが流れて、馬群が縦長になれば川田騎手もイクイノックスを見つけやすいですし、当然ながらペースが上がって得をするのは、より後方から競馬をする馬。
個人的にはパンサラッサを捕まえるという“仕事”が増えたイクイノックスよりも、挑戦者としてライバル1頭に集中できるリバティアイランドの方が有利だと思います」(競馬記者B)
実際に世界レコードが飛び出すなど、一見まったく非の打ち所がないイクイノックスの前走の天皇賞・秋だが、ラスト1ハロンの11.7秒は最初の1ハロンを除けば最も遅い時計。ゴール前は流し気味だったとはいえ、世界No.1ホースといえどもわずかに失速しているのだ。
パンサラッサの参戦は確かに厳しいペースを生む分、実力通りに決まる可能性が高くなったといえる。だが、その一方で、先に抜け出すであろうイクイノックスの“傷”が大きくなる可能性があることも示唆している。リバティアイランドに付け入るスキがあるとすれば、まさにそこだろう。究極の底力勝負になるのなら、挑戦者の斤量4キロ分のアドバンテージが大きくモノを言うはずだ。