三冠牝馬リバティアイランド&菊花賞馬ドゥレッツァ! 新王者ドゥラメンテが最有力も、ディープの意思を継ぐ者が「噂の黄金世代」で2歳No.1獲得【2024年リーディングサイアーを占う】

撮影:Ruriko.I

11年続いた”ディープインパクト政権”に幕…

 イクイノックスの世界的活躍など様々なシーンに彩られた2023年の競馬界だが、1つ歴史的な動きがあった。種牡馬界の“政権交代”だ。

 31日、JRA(日本中央競馬会)は2023年のJRAリーディングサイアーランキング(賞金順)を発表。11年連続で首位を維持していた絶対王者ディープインパクトに替わって頂点に立ったのは、ドゥラメンテだった。

 2016年に現役を引退して種牡馬入りしたドゥラメンテは、初年度産駒からG1・3勝のタイトルホルダーを輩出するなど、瞬く間に種牡馬界のスターダムに躍り出た。その後もスターズオンアースなど多くの活躍馬を出し、最高傑作のリバティアイランドが牝馬三冠に輝いた今年、ついにリーディングサイアーに輝いている。

 サンデーサイレンスの13年連続、そしてディープインパクトの11年連続。長期政権が続く種牡馬界だけに、ここから新王者ドゥラメンテの長きにわたる覇権が幕を開ける……と言いたいところだが、ご存知の通りドゥラメンテは2021年に他界。それはつまり種牡馬界が再び群雄割拠の時代を迎えることを示唆している。

 そこで今回は年明け企画として、2024年のリーディングサイアーを占ってみたい。※()は2023年の主な活躍産駒

2024年はリバティアイランドの1年になるか 撮影:Ruriko.I

ドゥラメンテ 2023年リーディング1位(リバティアイランド)

 大本命は当然ドゥラメンテの連覇だ。覇権奪取の要となった三冠牝馬リバティアイランド、菊花賞馬ドゥレッツァの2枚看板は強烈の一言。スターズオンアースも現役続行を発表しており、来年も盤石の1年になりそうだ。

 唯一気になることは、まだ今年の明け3歳馬にこれといった有力馬が登場していないことか。期待されたガイアメンテやラヴスコールといったところが2戦目で躓き、2歳リーディングも15位とやや出遅れている感がある。

 ただしタイトルホルダー、ドゥレッツァという2頭の菊花賞馬がいる通り、やや奥手が多いことも事実。今後、勢力図を覆すような存在が現れて「それがドゥラメンテ産駒だった」ということも大いにあり得る。なお、ドゥラメンテ自身は2021年に他界しているが、今年の2歳世代がラストクロップになる。

世界を驚かせた個性派パンサラッサもついに引退 撮影:Ruriko.I

ロードカナロア 2023年リーディング2位(パンサラッサ)

 アーモンドアイという歴史的名牝がターフを去り、凋落が懸念されたロードカナロアだが、稀代の逃げ馬パンサラッサが世界を股に掛ける活躍を見せた。ただし、そのパンサラッサも昨秋のジャパンC(G1)を最後に引退。2024年はその輝かしいキャリアの分水嶺になるかもしれない。

 現役馬で最も大きく期待できそうなのは、今年のスプリングS(G2)とチャレンジC(G3)を勝ったベラジオオペラか。陣営は早くから「本格化は古馬になってから」と話しており、日本ダービー(G1)4着以来の復帰戦となった12月のチャレンジCで古馬を撃破。今年はG1獲りが使命となる1頭だろう。

 また、リーディング6位とまずまずだった2歳馬では、ここまで抜けた馬がいない印象だったが、2023年の開催最終週にベラジオボンドが3馬身差でデビュー戦を圧勝。昨年の千葉サラブレッドセールで最高額となる1億円で取引された期待馬で「千葉サラ出身のベラジオ」は先述したベラジオオペラと同じパターン。上村洋行厩舎という点も共通している。No.2種牡馬の浮沈のカギは、最近勢いのあるベラジオ軍団が握っているかもしれない。

ディープインパクト晩年の傑作ジャスティンパレス 撮影:Ruriko.I

ディープインパクト 2023年リーディング3位(ジャスティンパレス)

 大種牡馬サンデーサイレンスの遺志を継ぎ、11年連続で絶対王者に君臨し続けたディープインパクトだが2019年に死去しており、明け4歳世代がラストクロップだ。上積みが見込めない以上、再度のリーディング奪取は至難の業だろう。

 ただ、時代が終わりつつある中で英国馬のオーギュストロダンが英ダービー(G1)とブリーダーズCターフ(G1)を制覇。リーディング3位という結果は、逆にこの馬が如何に抜けた存在だったのかを物語っている。サンデーサイレンスから受け継いだ王者のDNAは、これから次世代に引き継がれていくことだろう。

2023年の最優秀4歳以上牝馬に選出されたソングライン 撮影:Ruriko.I

キズナ 2023年リーディング4位(ソングライン)

 そんなディープインパクトのDNAを色濃く受け継いでいるのが、2013年のダービー馬キズナだ。現役時代こそG1・1勝に留まったが、種牡馬入りからコンスタントに活躍。昨年は、ソングラインがヴィクトリアマイル(G1)と安田記念(G1)を連勝してJRA賞の最優秀4歳以上牝馬に輝いた。

 そんなキズナだが、この勢いは2024年でますます加速する見込みだ。というのも実は、昨年の2歳世代は戦前から「今年のキズナは熱い」と言われていた黄金世代だからだ。

 実際にサンライズジパングがホープフルS(G1)3着、タガノエルピーダとジューンテイクが朝日杯フューチュリティS(G1)で3、4着とコンスタントに産駒が活躍。最終的に重賞勝ち馬こそ出なかったものの、それで2歳リーディングサイアーを獲ってしまうのは、産駒が安定して走るキズナの大きな武器と言えるだろう。

 無論、東京スポーツ杯2歳S(G2)で2着したシュバルツクーゲルなど、大物感のあるクラシック候補も控えている。3歳世代の上積み次第では、父ディープインパクトに次ぐリーディング奪取も見えてくるはずだ。

キタサンブラックの最高傑作となったイクイノックス 撮影:Ruriko.I

キタサンブラック 2023年リーディング6位(イクイノックス)

 イクイノックスと並ぶ、国内最高額の種付料2000万円で2024年シーズンを迎えるキタサンブラック。No.1種牡馬としてリーディング奪取が期待されるところだが、何と言っても稼ぎ頭のイクイノックスが引退した事実は極めて大きいと言わざるを得ない。

 浮沈のカギを握るのは、皐月賞馬ソールオリエンスだ。有馬記念(G1)こそ残念な結果に終わってしまったが、展開に恵まれない面もあった。イクイノックスのように成長力のある産駒が多いだけに、来年の伸びしろにも期待したい。

 また、今年の年末はチャンピオンズC(G1)と東京大賞典(G1)で2着したウィルソンテソーロが、キタサンブラック産駒の成長力を改めて見せつけた。だが、種牡馬リーディングはあくまでJRAの競走が対象。海外や地方へ遠征する機会が多いダート馬を送り出す種牡馬にとっては、基本的に不利なルールになっている。

 以上、2024年のリーディングサイアーを占ってみた。大本命はドウラメンテながら、明け3歳馬にこれといった大物が出ていないことが気がかりだ。逆に黄金世代の明け3歳馬たちの活躍が期待できるキズナがダークホースか。

 いずれにせよ、ディープインパクトという絶対王者が去った来年のリーディングサイアー争いは例年以上に興味深い戦いになりそうだ。

GJ 編集部

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