【ダイヤモンドS(G3)展望】36年ぶり牝馬Vへ…サリエラが「過酷レース」に挑戦!2年前の覇者テーオーロイヤル、短距離血統ニシノレヴナントら強敵が相手
17日、東京競馬場ではダイヤモンドS(G3)が行われる。舞台となる東京芝3400mは、向正面の真ん中からスタートし、広い東京コースを1周半する。
ハイペースになることはほとんどないが、逃げ馬は過去10年で「0-1-0-9」と不振。その一方で中団待機組は「5-4-5-39」の好成績で、単勝回収率は665%、複勝回収率も156%と高くなっている。今年も強力な末脚を持つ馬が中心となるか。
注目は半兄にサリオス、全姉にサラキアがいる良血馬のサリエラ(牝5歳、美浦・国枝栄厩舎)だ。体質の弱さもあって、デビュー当初から間隔を空けながら使われ、5歳を迎えたがまだキャリア7戦と馬は若い。
これまでローズS(G2)2着、目黒記念(G2)3着など、いつ重賞を勝ってもおかしくない実力はあるものの、昨夏以降は新潟記念(G3)7着、エリザベス女王杯(G1)6着と、やや不完全燃焼の結果に終わっている。
これまでは2000m前後の距離を走ってきたが、今回は一気に距離を延長。牝馬としてはかなり過酷な3400m戦となるが、果たして国枝師に勝算はあるのか。
1週前には美浦Wコースで追い切られ、6ハロン82秒8-ラスト11秒2の好タイムをマーク。俊敏な動きを見届けた国枝師は『サンケイスポーツ』の取材に「体に張りがあって、前走より状態はいい」と手応え十分。「長距離適性はある」ともコメントしており、1988年ダイナブリーズ以来、36年ぶりの牝馬Vも決して夢ではなさそうだ。
そんなサリエラに立ちはだかるのは、2年前の覇者テーオーロイヤル(牡6歳、栗東・岡田稲男厩舎)である。
2年前は1勝クラスからの4連勝で当レースを制し、長距離路線の主役候補に名乗りを上げた。実際に次走の天皇賞・春(G1)でも4番人気で3着と健闘している。
しかし、その年の秋はジャパンC(G1)で14着に敗れ、その後、放牧先で骨折し長期休養を強いられた。復帰したのは、昨年11月のアルゼンチン共和国杯(G2)。この時は乗り込み量もやや不足していたか、10着と力を出せず。しかし、叩き2戦目のステイヤーズS(G2)で、自慢のスタミナを存分に生かし、アイアンバローズの2着に好走。改めて地力の高さを証明した。
前走後はカタールかドバイの海外遠征も候補に入っていたが、ひとまず国内に専念。今回はかなり厳しいハンデを背負う可能性が高そうだが、万全の状態でレースを迎えることができれば、勝利に最も近い存在といえそうだ。
ニシノレヴナント(セ4歳、美浦・上原博之厩舎)は、父が芝とダートのスプリント路線で活躍したネロという短距離血統。しかし、中距離で3勝した母ニシノアモーレの血が濃く出たか、本馬は昨年の春に中長距離路線に転じて結果を残してきた。
昨年2月に未勝利戦を勝って以降は、敗戦→勝利を繰り返しており、流れとしては昇級初戦となる今回は惜敗する順番。ただし、前走のグレイトフルS(3勝クラス)で、強敵キングズパレス以下を寄せ付けず完勝しており、軽ハンデも味方につければ、あっさり重賞制覇を遂げてもおかしくはないだろう。
鞍上を務めるのはコンビ7戦4勝の大野拓弥騎手。前走後に「気難しいところはあるけど、今日は比較的真面目に走ってくれました」と完全に手の内に入れた様子だ。
管理する上原博調教師も「父はネロですが、長い距離で楽しみです」と話しており、一気の距離延長で重賞獲りを目論む。
ヒュミドール(セ8歳、美浦・小手川準厩舎)は、長距離重賞の常連。昨年の当レースは13番人気ながら2着に好走し、波乱を演出した。骨折明け3戦目で状態も良化途上。今年も激走を見せてくれるか。
牝馬の挑戦はサリエラだけではない。これまで24戦すべてで2000m以下を使われているグランスラムアスク(牝5歳、栗東・矢作芳人厩舎)も出走を予定している。
昨春に3勝クラスを突破したが、オープンでは4戦して7着が最高着順とやや頭打ち状態。一気の距離延長でこの状況を打破できるか。鞍上には好調R.キング騎手が起用される見込みだ。
この他には、前走の万葉S(OP)で0秒5差の5着と長距離で復調の兆しを見せたワンダフルタウン(牡6歳、栗東・高橋義忠厩舎)、重賞初挑戦の前走ステイヤーズSで0秒7差の4着と健闘したワープスピード(牡5歳、美浦・高木登厩舎)、2年前のアルゼンチン共和国杯で2着の実績があるハーツイストワール(牡8歳、美浦・国枝栄厩舎)なども虎視眈々と上位を狙う。
年に1度の“東京マラソン”を制するのは果たしてどの馬か。ダイヤモンドSは17日の15時45分に発走を迎える。