「英クラシックを世界の最前線へ」1970年のニジンスキー以来、約50年ぶりの三冠馬誕生なるか
英国の三冠馬は、もはや伝説に?
昨年からJRA賞の最優秀短距離馬が、最優秀マイラーと最優秀スプリンターに2分されるなど芝・ダートだけでなく、距離に至るまで明確にカテゴライズ化されている近代競馬。
実際に同年のマイルCS(G1)とスプリンターズS(G1)という“2階級制覇”を成し遂げたのは、最近では2020年のグランアレグリアのみ。それ以前だと、1997年のタイキシャトルまで遡る。
それだけ2つのカテゴリが高い壁によって分類されているとも言えるが、同時に近年は特に“その壁”を越えようとする意欲も薄いように感じられる。何故なら短距離、マイル、中距離など各路線がしっかりと整備されており、適性を外れてまでカテゴリを跨ぐ必要性が薄いからだ。
2000mの皐月賞、2400mの日本ダービー、3000mの菊花賞という3つのレースで争われる牡馬クラシックに目を向けると、2020年のコントレイルが三冠馬になって以降、皐月賞馬が菊花賞に出走したのは2023年のソールオリエンスのみ。その年はダービー馬のタスティエーラも参戦したが、菊花賞で皐月賞馬とダービー馬が戦うのは、実に23年ぶりだったそうだ。
JRA(日本中央競馬会)も、そんな現実を懸念してか昨年から三冠競走の1着賞金を増額すると共に、牡馬三冠制覇のボーナスを1億円から3倍となる3億円に増額。もし、三冠を達成すれば1着賞金+ボーナスで合計10億円に到達する破格の好条件を用意している。
また、そんな日本の三冠より、さらに深刻なのが英国の三冠競走である。
先述した通り、日本における直近の三冠馬は2020年のコントレイルだ。では、英国はというと、1970年のニジンスキーが最後の三冠馬である。つまり、英国競馬では50年以上も三冠馬が誕生していないのだ。2012年には、キャメロットが42年ぶりの三冠を狙ったが、日本の菊花賞にあたる英セントレジャー(G1)で2着に敗れた。
これだけ三冠馬が誕生していない理由として、まずは英国クラシック三冠の過酷さを挙げるべきだろう。
日本のクラシックが2000m~3000mで争われることに対して、英国は1600m~3000mとより厳しい適性が問われる。特にマイル戦である英2000ギニー(G1)と、長距離戦の英セントレジャーを共に勝利するのは至難の業だ。
それだけに近年では挑戦する馬自体が少なくなってしまっているが、この現状打破に声を上げたのが大手ブックメーカー『ベットフレッド』だ。
『ベットフレッド』は来年2025年から英2000ギニーの新スポンサーを引き受けることを発表。これに伴って、すでにスポンサードしている英ダービー(G1)と英セントレジャーを含む三冠制覇を達成した馬にボーナスを贈ることを明らかにした。その額は日本の3億円を超える200万ポンド(約4億1000万円)に上る。
「英クラシックを本来あるべき場所、世界の競馬の最前線に戻したい」
そう力強く宣言したのは『ベットフレッド』のF.ドーン会長だ。果たして、もはや伝説となりつつある英国三冠馬は誕生するのだろうか。