四位洋文騎手が「トラウマ」嘆く……武豊騎手も不快感を露にした昨年「マイルCS」ディサイファの悲劇
レースの雌雄が決する残り100mを切ったところで、ミッキーアイルとネオリアリズムが激しい叩き合い。差し追い込み勢も猛然と先頭を飲み込もうとした瞬間、突如ミッキーアイルが外側へ斜行。多くの後続馬が大きな影響を受けた。その中の1頭で、落馬寸前になるほどの大きな不利を受けたのがディサイファだった。
結果的にミッキーアイルの斜行は認められたものの降着には至らず、そのまま優勝。鞍上の浜中俊騎手には騎乗停止4週間という非常に重い処分が下されたが、結果的には”やったもん勝ち”といったような後味の悪い決着となった。なお、不利が響いたディサイファは10着に沈んだ。
実はディサイファは、このレースの直前「非常に調子が良い」とメディアにも取り上げられていた。
管理する小島太調教師も「いい動き。はちきれんばかり」と仕上がりに満足しており、3歳6月に初勝利、4歳5月に2勝目を上げた遅咲きのディープインパクト産駒が、いよいよ本格化かといわれていた矢先の事故だった。
この結果に無念を噛みしめたのは小島調教師ばかりではない。鞍上の武豊騎手もレース後には「後味が悪い。直線ではいい感じだった」と悔しさを滲ませていた。その後の公式HPでも「ディサイファがしっかりした馬でしたからボクも無事でいられましたが、あれが若馬だったら大事故が起きていたかもしれません」と当時を振り返っている。
幸い、その時には人馬共に無事だった。だが、目に見えないところでディサイファは確実にダメージを受けていたようだ。
次戦となった昨年12月のチャレンジC(G3)では、スタート直後に何もないところで自ら躓くアクシデント。結局、レースは9着に惨敗し、武豊騎手も「道中はこの馬にいい流れかと思ったのですが……」と首を傾げている。この時点ですでに”変調”が起きていたのかもしれない。
その後、ディサイファはレース中だけでなく、追い切りでも自らやめてしまう傾向が出たことで、陣営も「マイルCSの後遺症」と考えざるを得なくなった。以後、様々な工夫やケアを施し、今回の札幌記念の前には小島調教師も「昨秋のマイルCSの不利で受けた精神的ダメージからようやく立ち直った感じ」(東京スポーツ)とコメントしていたのだが……。
「競走馬は非常に頭が良いですが、同時に繊細で臆病な生き物でもあります。レースで辛い経験をした若駒が、その後レースそのものに拒否反応を示し、まったく能力を発揮できなくなるケースは決して珍しくありません。