~武豊・蛯名正義の30年~ 節目の年に互いの「悲願」は成就するのか……彼らが描く「今」と「未来」、そして日本ダービーへ
上記画像は、JRAの機関誌『優駿 3月号』(JRAピーアールセンター)の表紙である。2人の騎手が並び立つこの表紙と対談ということで、ファンの間でも大きな話題を呼んだ。
武豊騎手、蛯名正義騎手。
現在の競馬界の「東西ビッグ2」と表現して間違いないこの2人は、1987年のデビューから今年で「30周年」の節目を迎える。
通算3800勝超え、競馬界の記録という記録をほぼすべて総なめにしている武騎手と、通算2400勝超え、関東馬が不利な時代を過ごしながらも歴代4位の勝利数を上げる蛯名騎手。いずれ劣らぬ国内最高のジョッキーだ。
この2人は今年、年数以外でも大きな「節目」、そして「チャンス」を迎えている。
武騎手は今年、ドバイの地でラニに騎乗しUAEダービーを制すると、米三冠への挑戦も成し遂げている(2戦を消化)。さらにはエイシンヒカリで仏・イスパーン賞を日本馬として初めて制覇。これまでもフランス競馬への長期滞在や世界各国で騎乗を経験してきた同騎手だが、その経験が今、花開こうとしている。秋にもヌーヴォレコルトとコパノリッキーでのブリーダーズカップ参戦や欧州遠征を積極的にこなす予定があり、大きな期待をかけられている。
武騎手はスポーツ報知のインタビューにて、「『何歳ぐらいで辞めるかな』とか『何歳までやろう』という感じもない。普通に長くできたらいいな、と思っている」と、常に自然体で騎手としての30年を過ごしていたようだ。レース前でもピリピリするようなことはないという。そのリラックスした雰囲気は他のアスリートとは一線を画すものであり、数々の大記録の要因となっているように感じられる。
対する蛯名騎手は、間近に迫った29日の日本ダービー(G1)の”主役”として大舞台に立つ。騎乗するディーマジェスティは、クラシック初戦の皐月賞を圧勝した期待の一頭。史上空前のハイレベルとされる今年のクラシック戦線だが、その中でのダービー勝利の意味はことのほか大きいものとなる。かつて同騎手とのコンビで凱旋門賞を2着したエルコンドルパサーと同じ二ノ宮厩舎の馬という点も、浅からぬ縁を感じさせる話だ。
蛯名騎手が日本ダービーで勝利したことは、まだ一度もない。騎手人生の中でも最高の栄誉であり目標であるダービー制覇。これまでは2着が最高だったが、今回はその悲願達成を叶えるだけの素質馬で24回目の祭典に挑む。
ダービーといえば、武騎手と蛯名騎手の同誌の対談の中で、こんなやり取りがあった。
2012年のダービーは、岩田康誠騎手騎乗のディープブリランテが優勝。2着はわずかハナ差に泣いた蛯名騎手騎乗のフェノーメノであった。写真判定を待っている間、武騎手はこう思っていたようだ。