【G1回顧・安田記念】モーリス敗れる! 職人田辺裕信の『信頼』と『技』が光った府中のマイル決戦は、古豪ロゴタイプが復活勝利!!
「ずっと厩舎の人たちと一緒に、どうやれば復活させることができるか考えてやってきて、大きな舞台で結果を出せたことが本当にうれしい」
モーリス、リアルスティール、フィエロ、ディサイファといった上位人気の大半は、前走からの乗り替わり。ほんの一瞬の判断の遅れや迷いが致命傷となるマイル戦で、今回が3戦連続の騎乗となる田辺騎手は、ロゴタイプを完全に手の内に入れていたようだ。
「本当に頭のいい馬で、今回の作戦にも上手く対応できたんじゃないかと思います」
ロゴタイプにとっては3歳の皐月賞(G1)以来、3年2カ月ぶりの勝利。これで朝日杯FS(G1)も含めてG1を3勝と、ローエングリンの後継種牡馬としてまた一段と拍が付いた。
2着に敗れたモーリスは勝ち馬に完全に出し抜かれた形となったが、検疫の都合で慣れない東京競馬場での調整を強いられたことと、あれだけ道中で折り合いを欠いての2着は、やはり高い能力の表れ。今後も日本の競馬界をリードする存在であることに変わりはないだろう。
フィエロは上がり3ハロン最速の「33.5秒」を繰り出したが3着止まり。逃げたロゴタイプに「33.9秒」で上がられては、どうしようもなかった。急遽の乗り替わりとなった内田博幸騎手は完璧に代役をこなしたといえる。
「ロゴタイプは、まだまだ元気に走れる馬だと思います。一緒に応援してください!」
思えばロゴタイプの父ローエングリンも3歳時から宝塚記念(G1)3着など高いパフォーマンスを見せていたが、最後の勝利は8歳の中山記念(G2)だった。いつ走るかわからないムラ駆けな面はあるが、6歳のロゴタイプはまだまだ若いということだろうか。
ここのところ堅い決着が続いていたG1戦線で、久々に度肝を抜かれるレースを見せてくれた田辺騎手とロゴタイプ。必ずしも強い馬が勝つ訳ではないからこそ競馬は面白いし、奥が深い。
レースに挑むにあたって強い気持ちやストーリーがあるのは、主役だけではない。特にG1ともなると、例え望み薄であろうと参加する全員が、並々ならぬ思いでレースに挑んでいる――。
そんな当たり前のことを、改めて思い出させてくれた安田記念だった。