【徹底考察】宝塚記念(G1) キタサンブラック「華麗なる逃走劇の裏に潜む『スローペース同盟』武豊は再び”呉越同舟の関係”を築けるか?」
【血統考察】
この馬の血統を考察するのは大阪杯、天皇賞・春に続いて3度目だが、結論は変わらない。例え、菊花賞に続いて天皇賞・春を制したとしても、ディープインパクトと同様の血統背景を持つブラックタイドと、優秀な短距離馬を数多く輩出しているサクラバクシンオーとの配合である本馬をステイヤーと呼ぶことはできない。
これが血統考察の限界と言えばそれまでだが、血統とはあくまで子孫の統計的なデータの蓄積の結果であり、本馬が今後どれだけ長距離を勝とうと、その傾向が簡単に変わることはないということだ。
父ブラックタイドはディープインパクトと同様の血統構成であり、ディープインパクトは中距離からマイル色が強い種牡馬であることは膨大な産駒が証明している。無論、だからブラックタイド産駒もまったく同様の傾向があると述べるつもりはないが、それでも本馬以外に距離をこなしている産駒は、母方に確固たるスタミナの要素が存在している。
例えばダービー3着の実績があり、2000m前後で活躍しているマイネルフロストの母父はロベルト系のグラスワンダーであり、同じように2400mの条件戦を勝ち上がり、先日の鳴尾記念で3着したプランスペスカの母父もロベルト系のブライアンズタイムだ。逆にマイルや1800mで活躍しているテイエムイナズマの母父はスピード系のダンチヒである。
ちなみにブラックタイド×サクラバクシンオーという馬は、本馬を含めて3頭いるが残りの2頭はダートの短距離馬だ。ディープインパクト×サクラバクシンオーでは8頭が該当するが、そのすべてがマイル以下を主戦場としている。唯一2000mで勝ちがあるのがアデイインザライフだが、この馬は母方にスタミナに優れたニジンスキーの血を持っている。
従って、血統的な見地からではキタサンブラックはマイルから長くとも2000m前後が守備範囲の馬としか判断できない。それは母母父のジャッジアンジェルーチや母母母父のリファールまで考慮しても結論は同じである。だが、それが誤りであることは十二分に承知している。
キタサンブラックは血統の常識を超えた存在と述べざるを得ないが、それでもあえて言わせてもらえば、3200mからの1000m距離短縮は当然大きな追い風だ。
≪結論≫
今回もおそらく1番人気はドゥラメンテが背負ってくれるだけに、キタサンブラックが厳しいマークに遭う可能性は低い。従って、2番人気が濃厚な”脇役”キタサンブラックは、再びカレンミロティックとアンビシャスと「呉越同舟の関係」を築けるかが大きなポイントになるだろう。
実は鞍上こそ異なるが、アンビシャスの鞍上横山典弘騎手とは大阪杯だけでなく、横山騎手がミュゼエイリアンに騎乗していた昨年のセントライト記念でも、スローペース同盟を組んで後続を完封した経緯がある。横山騎手と武豊騎手の間柄であれば、今回も大阪杯と同じようにスローペース同盟結成する可能性が高い。
だが、問題は池添謙一騎手からT.ベリー騎手に乗り替わったカレンミロティックの方だろう。
この短期免許のオーストラリア人には、日本語はもちろん、武豊騎手の威厳もスマイルも通用しなさそうだ。したがってキタサンブラックの浮沈はもしかすると、ベリー騎手が”空気”を読めるかに懸かっているのかもしれないが果たして……。
だが、それさえクリアすれば、スローペースを共謀する逃げ集団は3頭。すなわちキタサンブラックの馬券圏内は固い。あとは最後の直線で”呉越”の猛襲をしのぎきり、仁川の地にも北島オーナーの「まつり」を響かせることができるかだ。
(監修=下田照雄(栗東担当))