JRA「海外招待馬」急増のワケ……裏には日本競馬ファンの財布を狙う現地主催者のしたたかな野望
先日JRA3歳馬ゴーフォザサミットのアメリカ遠征(7月7日・ベルモントダービー招待ステークスG1)、サトノアレスのフランス遠征(8月12日ジャック・ル・マロワ賞G1)が発表された。
フランス遠征後にまったく勝てなくなったマカヒキやサトノダイヤモンドを例に挙げるまでもなく、海外遠征の負担は相当なものと思われる。加えて輸送や滞在費など金銭的な負担も少なくなく、今回のゴーフォザサミットやサトノアレスの場合、1着以外の賞金であれば輸送コストや税金を考えれば赤字となるだろう。しかし今回のゴーフォザサミットは「招待」ということで金銭的な優遇措置があるというから驚きである。つまり輸送や滞在に関する費用を、全額ではないものの主催者側が負担するというのだ。
超一流の実績を残したわけではないにも関わらず、わざわざ「招待」までして日本馬を呼ぶのは不自然と言えよう。実際にその背景は様々な思惑があるようだ。というのもある関係者によると
「昔はよほどの事情でない限り、わざわざ日本のG2クラスの馬を名指しで招待するということはありませんでした。しかし最近は日本馬に遠征してほしいという主催者が増えています。そのきっかけはJRA(日本中央競馬会)が始めた外国レースの馬券発売。最初の発売となったのはマカヒキが出走した2016年の凱旋門賞ですが、この馬券の売上は関係者の見込みを大きく上回る41億8599万5100円を記録し、日本国内だけでなく海外関係者にかなりのインパクトを与えました。海外の主催者には販売額に応じた手数料が入ります。ですから何とかしてJRAで馬券を販売してもらいたいのです」
と各国主催者の金銭的な狙いがあるようだ。確かにこの馬券発売は主催者側には余計な手間もリスクもなく、販売を許可するだけで多額の手数料を得られるのだから、こんなに美味しい話はない。
前述の凱旋門賞で記録した41億円は、地元フランスの場外発売公社の約2.1倍という売上だったこともあり、関係者は度肝を抜かれたのだろう。しかし日本で海外レースの馬券を販売するには条件がいくつかある。まずは農林水産省が認める販売対象レースとして選ばれなければならない。そのためにはレースの格付けや日本馬の出走が条件であり、今回のゴーフォザサミットの招待は先々を見据えての先行投資と考えられる。
日本は馬券の売上が高いことで有名だ。年間馬券売上規模はオーストラリア、フランス、アメリカなどの各国と比較して約2倍、国によっては約3倍ともいわれている。1996年の有馬記念で記録した約875億円という馬券売上はギネスにも記録されているし、多くのG1レースが行われる2016年アメリカのブリーダーズカップ2日間の合計売上が約185億円、これは今年の安田記念1レース分(188億8899万7300円)にも及ばない金額で、まさに日本の馬券売上は群を抜いているのだ。
以下の数字はこれまでJRAが発売した海外レースの売上一覧であるが、年間100億円前後となっており、レース数が増えればさらに売り上げも増えていくような勢いを見せている。