宝塚記念(G1)「重馬場の鬼」ワーザーが世界を見せつける!?「梅雨」「日本馬のピーク」「キタサン不在」計算尽くされた香港最強調教師の目論見
1つは先述した香港金盃のレース後に鼻出血が確認され、3カ月の出走停止処分を余儀なくされていたこと。その結果、予定されていた5月のクイーンエリザベス2世Cに間に合わなかったためだ。今回の出走はいわば、その”埋め合わせ”的な要素もある。
しかし、もう1つの理由は本馬を管理するJ.ムーア調教師が『web Sportiva』(集英社)の取材に応じた際にコメントした「恐ろしい一言」が印象に残っている。
「この時期、日本は梅雨。馬場がこの馬に向く。しかも、昨年のキタサンブラックのように、日本のトップホースは決してピークの出来にない。そうだろう?」
ムーア調教師といえば、香港で7度の調教師リーディング、香港競馬の調教師としては初の1000勝超えを果たした「千勝爺」。通算勝利数は1600勝以上。ちなみに日本歴代最多は尾形藤吉の1669勝で、現役では藤沢和雄の1381勝。単純な比較こそできないが、これだけを見ても調教師で1600勝が、如何に優れた実績であるのかが窺える。
過去2006年と2007年に管理馬を安田記念(G1)に送り込んでおり、2006年にはジョイフルウィナーが8番人気の低評価を覆して3着に好走している。
豊富な経験から日本の競馬にも深く精通しており、日本独特の梅雨によって「宝塚記念の馬場が重くなる可能性が高い」こと、さらには昨年から大阪杯がG1昇格を果たした影響で「トップホースのピークが前倒しになっている傾向」を分析している。
となれば「メンバーが昨年よりも落ちていること」も当然了承済みで、今回の遠征はいわば”狙い撃ち”と考えるべきだろう。
そんな香港の名伯楽の”目論見”は、ここまでは見事に的中。先週まで超高速馬場だった阪神競馬場には連日のように雨が降り注ぎ、すっかり様相が変わっている。ワーザーは地元香港で「スイマー」と呼ばれるほどの重馬場の鬼だそうだ。
唯一の死角となりそうなのは、調教後の馬体重が前走比‐19kgだったことだ。ただし、これは大方「香港からの輸送の影響」と見られているが、果たしてそれだけだろうか。