JRA 「競馬は社台・ノーザンだけじゃない!」 日高生産馬にこだわる頑な男

 日本の競馬界は今、馬主はおろか、調教師ですら、世界的競走馬育成の雄、社台・ノーザンファーム生産馬抜きでは始まらない。新人調教師に至っては「社台参りに行き、コネを作らないと勝てない」と言われるほどだ。吉田善哉氏がサンデーサイレンスの導入を中心として築きあげた今の日本競走馬の血脈と世界レベルに押し上げた社台グループの功績は偉大だ。だが、いつしかそのグループの影響力は大きくなりすぎてしまった。

 同グループの生産馬は自社外厩での調整を行い、調教師はただ指示に従いレースに出走させるだけという成り行きには、皮肉にも「10日競馬(外厩から帰厩後10日以内に出走させる)」なる言葉を生み出したくらいだ。

 今回、1200m戦でアドレをデビューさせた昆貢調教師。出走表で字面の血統だけ見て「春の天皇賞馬であるヒルノダムールの産駒を1200m戦でデビューさせるのか!?」と訝しん(いぶかしん)でしまったが、きっちりと勝利という形で結果を出すあたり、さすが只者ではないと感嘆する声も多い。

 その同師には「どうしても譲れないひとつの拘り」がある。

 このご時勢でも、あの社台・ノーザンファームの生産馬を預からないのだ。ただひたすら日高生産馬に拘り、頑なに自身のやり方を貫きながらも、このような成績を収めていることに改めて同師の想いと力量に魅せられた。その伯楽ぶりには、畏敬の念すら抱く。

 以前、「日高地方にもいい馬はいるんだから、そういう馬をコツコツと探す。社台グループの馬ばかり勝ってたら競馬はおもしろくないでしょ」昆師はこう語ったそうだ。(Asagei plusより)

 日高生まれの地味な馬、アドレが、日高生産馬に拘るひた向きな昆貢調教師の下、鍛え上げられてゆき、やがて大きな舞台で駆け巡る姿に想いを馳せてみるのも、面白いのではないだろうか。

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