武豊クリンチャー凱旋門賞前哨戦フォワ賞(G2)から「惨敗」? 史上最強「ガチメンバー」で今年は”通過点”にあらず
そう話すのはクリンチャーと共に海を渡った宮本博調教師だ。確かに頭数こそ6頭立てに収まっているが、今年のフォワ賞は世界的に注目を集めるハイレベルな「3強対決」といわれている。そして、残念ながら日本のクリンチャーはその3強に該当していないのだ。
今年のフォワ賞の主役は凱旋門賞7勝を誇り、現地フランスを代表する名伯楽アンドレ・ファーブルに他ならない。何故なら、その3強すべてがファーブル厩舎の所属馬だからだ。
その筆頭に挙がるのが、昨年のブリーダーズCターフ(G1)の覇者タリスマニックだ。
昨秋のファワ賞で3着に敗れるなど、G1の壁に跳ね返され続ける一介の重賞馬に過ぎない存在だったが、その後に挑んだブリーダーズCターフから本格化。続く香港ヴァーズ(G1)でも当時の世界王者ハイランドリールに食い下がる2着。初ダートとなった今春のドバイワールドカップ(G1)こそ9着に大敗したが、8月の復帰戦ゴントービロン賞(G3)を2馬身差で快勝している。
そのタリスマニックとほぼ互角の評価を受けているのが、4歳馬のヴァルトガイストだ。
2歳秋にクリテリウムドサンクルー(G1)で初のG1制覇を飾ったものの、昨年はフランスダービー(G1)で2着など、あと一歩の存在だったヴァルトガイスト。しかし、古馬になった今年から本格化。エドゥヴィユ賞(G3)、シャンティ大賞(G2)で連勝を飾ると、前走のサンクルー大賞(G1)で3連勝を達成。凱旋門賞戦線に大きく名乗りを上げた。
3強の中でも実績No.1の存在が、昨年の凱旋門賞2着馬となるクロスオブスターズだ。
昨年はガネー賞(G1)でG1初制覇を達成するとフォワ賞でも2着。そのまま凱旋門賞でも2着と世界の頂点へあと一歩まで上り詰めたクロスオブスターズ。今シーズンは未勝利と調子を落としている様子だが、春のドバイシーマクラシック(G1)では日本のレイデオロに先着を果たす3着。今年のキングジョージ6世&QES(G1)を勝ったポエッツワードとクビ差の接戦を演じており、その底力は未だ健在と述べていい存在だ。
日本のクリンチャーは前哨戦からこれら3頭を相手にしなければならず、現地でも苦戦が予想されている。さらにこの3強に続くカプリも、昨年の愛ダービー馬。昨年の凱旋門賞こそ17着に大敗しているが、他にも日本の菊花賞(G1)にあたる英セントレジャー(G1)を勝つなど、その実力は確か。クリンチャーにとっては厳しい相手だ。
だがポジティブに捉えれば、これだけのメンバーがそろったことで、冒頭で問題視した本番との「レースレベルの乖離」は多少マシになるはずだ。より本番に近いレベルで戦えることは、クリンチャーにとってもプラスに働くことは間違いない。
また、この日本代表にとって大きな武器となるのが、その「重馬場適性」だ。