【徹底考察】ローズS(G2) シンハライト「2つの弱点を克服し『万全の態勢』も、ここは敗戦が吉!? 例年のオークス馬が繰り返す『独特』の傾向とは」
『考察』
「秋は桜花賞馬もマイルCを制した牝馬も出てくると思うので、3歳牝馬No.1を決めるレースになると思う」
これはシンハライトが「1強」といわれたオークス(G1)を制した際の池添謙一騎手の言葉だ。残念ながら「マイルCを制した牝馬」メジャーエンブレムが故障離脱してしまったことで、言葉通りにはならなかったが、それでも「桜花賞馬」ジュエラーは間に合わせてきた。
桜花賞で「3強」を形成したジュエラーとメジャーエンブレムが不在ということもあって、シンハライトにとっては、まさに負けられない戦いだった今春のオークス。
レースは好スタートを切ったダンツペンダントがハナを主張し、それにゲッカコウとエンジェルフェイスが注文を付ける、例年のオークスとしてはまずまず流れた展開で始まった。そんな中、シンハライトは内枠から僅かに遅れたスタートを切ったが、無理をせず後方へ。次々と他馬が外から被さってくる間に、後ろから3頭目までポジションが下がっていた。
一方の2番人気のチェッキーノは中団外目、ビッシュは飛ばし気味の先頭集団を見る形で、中団よりやや前に位置取っていた。
1000mの通過は59.8秒。先頭から最後方までが20馬身程度の縦長の展開で、一度隊列が決まってからは大きな動きもなく第4コーナーへ。馬群が一気に凝縮されて、3歳牝馬の頂点を決める最後の直線に入った。
先頭は満を持してダンツペンダントを交わしたエンジェルフェイスが躍り出た。
だが、すぐに脚色が悪くなり、今度は外からビッシュがそれをかわす。4番人気のアットザシーサイドも必死に食らいつくが、すでに限界が来ている。シンハライトは外に持ち出さず、馬群の真ん中で隙間を狙っていた。
最後の200mを切って、先頭はM.デムーロとビッシュ。フローラS(G2)で1番人気に推され最後方からチェッキーノと互角の末脚を使った素質馬が、ついにそのベールを脱いだ。それを外から猛然とチェッキーノが追い込んでくる。
しかし、その瞬間、馬群の中からシンハライトがはじけ飛んできた。
粘り込みを図ったビッシュをあっという間に捉えると、食い下がるチェッキーノを従えたままゴール。まさに一瞬の切れ味で格の違いを示したシンハライトが、ライバルが不在の中で見事桜花賞の雪辱を晴らし、改めてその強さを見せつけた。
着差こそクビ差だったが外に持ち出さなかった分、決してスムーズな競馬ではなかった。それでも抜け出した時の脚は、他馬よりも完全に一枚上の手応え。格の違いを見せつけた勝利だった。
あれから約4カ月。休養を経て8月半ばに帰厩した「樫の女王」は、極めて順調な調整を重ねているようだ。