「英断?」それとも「見切り発車?」問題山積の中、JRAが『ケンタッキーダービー出走馬選定ポイントシリーズ』を急設した「表側の理由」と「裏側の理由」【後編】
2歳、3歳のダート路線の見直しは急務であり、新たなダート重賞創設も早急に取り掛かるべき問題だ。実際に、来年のヒヤシンスSの施行距離は「未定」となっているが、東京開催は確定しており、1600m以外には1300mと2100mしか選択肢がない。ちなみにラニは、昨年のヒヤシンスSで5着に敗退している。
従って本番の2000mに距離が近い2100mが最も適切と考えられるが、今のJRAがそれを配慮するかは甚だ疑問だ。
これまで述べた表面的な欠点だけでも簡単に浮き彫りになる辺り、どう考えても『JAPAN ROAD TO THE KENTUCKY DERBY』がJRAの”見切り発車”の下で急設された感は否めない。
無論、これからいくらでも改善の余地はあるだろうし、改善されていくだろう。しかし、それでは何故今年中に、このような杜撰な状況で開始する必要があったのか。
まず「ラニが作った道の『火』が消えない内に」という考えはあるだろう。だが、それならJRAが『JAPAN ROAD TO THE KENTUCKY DERBY』の創設を予定として発表するだけでいい。それで来年以降のスタートになったとしても、モチベーションは十分に保たれるはずだ。
その期間に様々な可能性を考慮して、十分に検討を重ねることができる。そうすれば、今回のような「恥ずかしいスタート」にはならなかったはずだ。
では何故、JRAはこれほどまでに『JAPAN ROAD TO THE KENTUCKY DERBY』の創設を急いだのか。
前編でも触れたが今年11月のカトレア賞まで、もう2カ月である。長年の”お役所仕事”が常々問題視されている日本中央競馬が伝統的に築き上げてきた「とにかく政治的で、何かと遅い流れ」からすれば、今シリーズの創設は異例の性急だと述べざるを得ない。
「関係者の話では、『おそらくJRAは来年のケンタッキーダービーでの馬券発売を検討しているのではないだろうか』という噂があります。現在、海外馬券発売が検討されている世界主要24レースにケンタッキーダービーは該当していませんが、来春までに米国3冠ごとねじ込んでくる可能性は高そうです。今回このシリーズが急に創設されたのも、おそらくケンタッキーダービーの馬券発売のゴーサインが、チャーチルダウンズ側から出たからではないでしょうか」(競馬記者)