【徹底考察】菊花賞(G1) エアスピネル「秋初戦で砕け散ったエリートのプライド……すべてを失った相棒に武豊が施す『最後の魔法』とは」
また、少なくとも今のエアスピネルに折り合いやイレ込みといった気性面の不安がないことが確認できたことは大きい。
これは武豊騎手自身が述べてもいることだが「精神面の成長は感じられた」とコメントしている通り、春先のエアスピネルには若干行きたがる面があった。ひと夏を越して、そういった精神面が成長したことは長丁場を戦う上で非常に大きい。
近年の菊花賞の傾向を踏まえれば、もしかしたら「スタミナ以上に、大きなウエイトを占めている」かもしれない。
【血統診断】
母が秋華賞馬エアメサイア。兄弟に目立った活躍馬はいないが、紛れもない良血だ。2冠馬エアシャカールの妹エアデジャヴーを祖母に持ち、キングカメハメハ×サンデーサイレンス×ノーザンテーストという日本を代表するサイアーラインの持ち主。距離適性は血統的には幅がありそうだが、スピードに勝った本馬を見る限り、現状のベストはマイルから2000m程度か。2歳重賞を勝っているが、まだまだ成長が見込める血統。順調にいけば、秋には菊花賞ではなく、天皇賞・秋やマイルCSに駒を進めている可能性もある。
と日本ダービーまでは記したが、本馬は菊花賞に挑むことになった。天皇賞・秋やマイルCSは来年でも出られるし、何よりも挑戦の姿勢を崩さなかった英断を支持したい。
だが、血統的な見地からは「クラシック三冠では、皐月賞がこの馬にとって最大のチャンスだった」という見解は変わらない。陣営の英断は支持するが、皐月賞→日本ダービー→菊花賞と条件が厳しくなることは一目瞭然。実際に着順自体も2歳の朝日杯FSから「2着→3着→4着→4着→5着」と距離を伸ばすにつれ下がり続けているのは、たまたまではないはずだ。
ただし、昨年の菊花賞馬キタサンブラック、2着リアルスティールには、さらに厳しい評価を下していた。それだけに近年の菊花賞は、血統だけでは解明できないことは事実。春には紛れもないトップホースの一頭だっただけに、意地の巻き返しを期待したい。