持っていないようで「実は」持っている!? 「黒歴史」を乗り越えた田辺裕信と「アノ馬」をめぐる2つの顛末
その証明となるのは、先日行われた武蔵野S。8番人気のタガノトネールの手綱を任された田辺騎手は、昨年のフェブラリーS優勝馬モーニンらを相手に果敢に先手を取りきると、そのままゴールまで後続に影も踏ませない完勝劇。1分33秒8という脅威のコースレコードを叩き出した。
この勝利は田辺騎手にとって僥倖だ。チャンピオンズCではコパノリッキーを降ろされたものの、コンビを組む新たなパートナーを見つけることが出来たからだ。タガノトネールは1400~1600mベストのタイプだが、掛かり気味に先行する馬ではないので距離延長にそこまで不安はなく、兄弟のタガノエスプレッソが2000mの弥生賞で好走している点も心強い。今回の勝利で優先出走権を獲得したことも踏まえると、チャンピオンズCで初のG1制覇に乗り込んでくることは考えられる。
こうして、ダート路線のお手馬を切らさず抱えておけることは、もちろん実力があるのは前提として、田辺騎手の命運がまだしぼんでいないことを表していると言っていい。
さらに、よくよく思い返せば、コパノリッキーを初めて降ろされた2015年の1月にも、今回と同じような幸運のサインは出ていたのだ。
それは、コパノリッキーが楽勝した東海Sの裏で行われていた、中山のメインレースAJCCだ。この時田辺騎手は4番人気のクリールカイザーに騎乗。まだ現役だった芦毛の怪物ゴールドシップなど強豪がひしめくなか、スローペースの単騎逃げを打ってまんまと逃げきった。この勝利を受けて元騎手の安藤勝己氏が、自身のTwitterで以下のようなコメントを出していた。