JRA京成杯AH(G3)過去10年で7勝! 横山典弘騎手調と争う“中山巧者”のアノ騎手は、関東勢“反撃”の3本目の矢になり得るか?
いよいよ開幕する秋競馬。12日には、中山競馬場で京成杯AH(G3)が行われる。
すでに枠順確定した同重賞の過去10年の勝利ジョッキーを調べると、2人の関東所属騎手が最多勝争いをしている。トップは4勝の横山典弘騎手で、3勝の田辺裕信騎手が1勝差で追う展開だ。続いてC.ルメール騎手、戸崎圭太騎手、池添謙一騎手が1勝ずつと、上位2人が10年中7年で勝利を挙げている。
その上位2人の騎手は、今年も出走予定。特に横山典騎手は、同じく調教師転身が噂され、7月11日以来、約2ヶ月騎乗していない田中勝春騎手をよそに、8枠15番のアカノニジュウイチで参戦する。
先日8日には、令和4年度の調教師免許試験の新規申請者数が発表されたばかり。調教師受験者130人のなかにその名があるか不明だが、一次試験は来週15日に行われる予定。当日の横山典騎手の動向が気になるところだ。
仮に来年以降、横山典騎手の調教師転身が実現すれば、同重賞の最多勝は近い将来、田辺騎手が逆転するだろう。その相性は素晴らしく、過去10年で3勝、2着3着は1回ずつで馬券圏内50%と好成績を記録。こちらは4枠7番のマルターズディオサで出走予定だ。
実は同馬は、ちょうど1年前の2020年9月の中山メイン紫苑S(G3)にも出走。5番人気で優勝している。鞍上はもちろん、田辺騎手だった。
「良い時と悪い時がはっきりしているタイプ。そういう意味で今回は良い」と、同馬を知り尽くす田辺騎手は、現在まで45勝を挙げて全国リーディング16位。なかでも中山で14勝マークするなど、“中山巧者”ぶりは健在だ。約5ヶ月ぶりの中山開催で、水を得た魚のようなひと暴れに期待したい。
夏競馬を終えた東西騎手の勢力図を振り返ると、どうしても“西高東低”と言わざるを得ない状況が続いている。
第3・4回小倉競馬で21勝を挙げ、夏の小倉リーディングに輝いた松山弘平騎手は、西の開催としてある意味、仕方なしと判断できる。ところが第3・4回新潟競馬で15勝を挙げて2年連続3回目の夏の新潟リーディングを獲得したのは、西の福永祐一騎手だった。
関東勢で一矢報いたのが横山武史騎手で、函館で15勝、札幌で20勝をマークして北海道リーディング獲得に成功。しかし西のC.ルメール騎手は、その北海道シリーズで27勝。夏の新潟開催の3勝と合わせて、夏競馬では計30勝を積み上げた。
北海道シリーズで23勝をマークした横山和生騎手と共に、今や関東勢が“反撃”するか否かは、横山兄弟の活躍に懸っているといえそうだ。
こうした状況のなか、中山開催がスタート。中山を得意とする田辺騎手が横山兄弟に次いで3本目の矢となり、関東勢“3本の矢”として関西勢に立ち向かうことができたら、これほど心強いことはないだろう。
今週から4週間続く中山と中京の東西開催で、田辺騎手が“中山巧者”ぶりをいかんなく発揮して、横山兄弟と大暴れすれば、関西勢で固められた全国リーディング上位の牙城を切り崩すことができるかもしれない。秋競馬から仕切り直し。関東勢の“反撃”に期待したい。
(文=鈴木TKO)
<著者プロフィール> 野球と競馬を主戦場とする“二刀流”ライター。野球選手は言葉を話すが、馬は話せない点に興味を持ち、競馬界に殴り込み。野球にも競馬にも当てはまる「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」を座右の銘に、人間は「競馬」で何をどこまで表現できるか追求する。