【特別追悼寄稿】「さらば、坂路の申し子ミホノブルボン」競馬の常識を覆した「雑草魂」は25年の時を経て、天国で待つライバルの元へ
安永調教助手の言葉通り「堂々の横綱相撲」を展開し、後続を引き離しにかかるミホノブルボン。だが、いつものように後続が離れない。そんな中、馬群を抜け出したライスシャワーが2冠馬にチェックメイトを掛けた。黒い刺客の”刃”が、ついに王者の喉元に届いたのだ。
ラスト200mを切り、両者の大勢は明らかだった。無敗の三冠という希望を打ち砕かれ、生涯初の敗戦を喫しようとする中でも、迫りくるマチカネタンホイザの追撃を最後まで許さなかったのはミホノブルボンの意地か。
「坂路の申し子」が敗れたのは、最後の直線に坂のないコースだった。
あれから25年。最大のライバル・ライスシャワーは因縁だった淀のターフで散り、”雑草”から「サイボーグ」を作り上げた戸山調教師も、全戦で手綱を執った主戦の小島貞博騎手もすでに他界している。
28歳の大往生を務め上げたミホノブルボンは「仲間」の元へ旅立ったのだ。
スパルタという文化が消滅した現代社会でも、人々は常に自身に問いかける「雑草でも、努力を続ければ、いつかエリートに勝てる日が来るのか」と、そんな人生の問いに「栗毛の超特急」はこう答えるのではないだろうか。
考える暇があれば、目の前の”坂”を登れ――。