JRA「1番人気連敗」ワースト記録は必然!? アーモンドアイ、コントレイル、グランアレグリア、クロノジェネシスらが築いた「最強時代」の反動とは
先週のヴィクトリアマイル(G1)でレイパパレが敗れ、これで今年のG1における1番人気はいまだ全敗。開幕戦となったフェブラリーS(G1)からの平地G1レース連敗記録8は、グレード制導入以降ワーストとなっているそうだ。
この負の連鎖はどこまで続くのか。大手競馬ポータルサイト『netkeiba.com』によると今週末のオークス(G1)では、2歳女王サークルオブライフが1番人気になると想定されているが、このような状況では決して喜ばしいばかりではないだろう。
無論、1番人気とは馬券購入者であるファン、つまりは「人」が作るものであり1番人気=1番強い馬とは限らない。
しかし、それにしても負けすぎな感は否めない。昔から「1番人気の勝率は約3割」と言われているが、仮にその数字を当てはめるなら1番人気の8連敗の可能性は約5.8%。なかなかのレアケースだ。
一体、今の競馬界に何が起こっているのだろうか。
1番人気がG1を勝ちまくった2年前
16/24。勝率にして約67%。かつて1年の平地G1・24レースの内、7連勝を含む16レースを1番人気が勝利するという近年で最も「平和な時代」があった。2020年、つまり今からわずか2年前の出来事である。
2020年は競馬界にとっても、歴史的な1年だったといえるだろう。3歳クラシックでは牡馬のコントレイルと、牝馬のデアリングタクトが共に無敗で三冠を達成。コントレイルはシンボリルドルフ、ディープインパクトに続く史上3頭目の無敗制覇。デアリングタクトは史上初の無敗牝馬三冠となった。
また当時の競馬界には、そんな最強3歳馬2頭の挑戦をあっさりと退けた史上最強牝馬アーモンドアイが頂点に君臨。積み上げた芝G1勝利は前人未到の9勝、まさに非の打ち所のない現役王者だった。
そして、おそらくアーモンドアイという傑物がいなければ歴史的名牝になっていたであろうグランアレグリア、クロノジェネシス、ラッキーライラックという3頭の牝馬に加え、フィエールマンもまた長距離では無類の強さを誇っており、以下のライバルたちが付け入る可能性は限りなく低いと言わざるを得ないほど、傑出した名馬たちが跋扈する時代でもあったのだ。
しかし、その一方であれから2年後となる現在、上記に名を挙げた馬の中で現役を続行しているのは、デアリングタクトただ1頭である。記録的な「平和の時代」を作り上げた、多くの絶対的王者が一昨年・昨年でターフを去り、今年の競馬界はまさに新時代を構築するための「群雄割拠の時代」を迎えているといえるだろう。
2020年→約2.28倍
2022年→約3.10倍
上記はG1における1番人気の平均配当だ。これだけを見ても、如何に今年の1番人気が頼りないかがわかるだろう。ちなみに2020年は24レースで9度もあった単勝1倍台だが、今年は8レースで大阪杯(G1)のエフフォーリアだけ。つまりファンにしても、今年のG1レースにおける1番人気への信頼はとにかく半信半疑なのだ。
競馬とは、様々な馬が栄枯盛衰を繰り返して紡がれていくものである。突出した名馬が何頭も同じ時代を彩れば当然、その“反動”はやがて巡ってくる。
今年はまさに競馬界の転換期だ。果たして、ここから新時代を担うニュースターが現れるのだろうか。それとも群雄割拠の時代が、なおも続くのだろうか。いずれにせよ今は「あらゆる馬に可能性がある時代」と受け止めて、ここからのG1戦線を見守りたい。
(文=大村克之)
<著者プロフィール>
稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。