日経新春杯(G2)ロバートソンキー「期待ハズレ」も見限りは早計!? 崖っぷち騎手の騎乗に賛否も…最大のチャンスで浮上した重賞勝ちの課題
15日、中京競馬場で行われた古馬のハンデ重賞・日経新春杯(G2)は、昨年のジャパンC(G1)で3着に入った実力馬のヴェルトライゼンデが優勝。トップハンデ59キロを懸念する声も聞かれたが、全く問題にしない快勝だった。
好騎乗でパートナーを勝利に導いたD.イーガン騎手も「ハートもガッツもある」と高く評価。短期免許で来日中のため、次走でのコンビ継続は難しいものの、「またG1でも好走できるよう頑張って欲しい」とエールを送った。
2着キングオブドラゴンとの着差はわずかとはいえ、追い切りで感触をつかんだイーガン騎手が、「抜け出すとソラを使う」癖を把握していたため、最後まで追い出しを我慢していたからだろう。
これに対し、ヴェルトライゼンデと単勝オッズで激戦を繰り広げたのは、1番人気で5着に敗れたロバートソンキー(牡6、美浦・林徹厩舎)だ。
コントレイル世代の同期でもある両馬は、クビ差の接戦を演じた3年前の神戸新聞杯(G2)で初顔合わせ(ヴェルトライゼンデ2着、ロバートソンキー3着)。当時、14番人気に過ぎなかった穴馬の好走で話題になっただけなく、本番の菊花賞(G1)で先着(ロバートソンキー6着、ヴェルトライゼンデ7着)も果たした。
その後、AJCC(G2)2着を経たヴェルトライゼンデが、屈腱炎を発症して1年4か月の長期休養を強いられるアクシデントで戦列を離脱。同馬に匹敵する実力を見せていたロバートソンキーの躍進に期待するファンは少なくなかったはずだ。
持っている実力を思えば、オープン入りに遠回りしたロバートソンキーだが、その間にライバルは復帰初戦の鳴尾記念(G3)を制して復活の狼煙を上げ、昨年9月のオールカマー(G2)で約2年ぶりの直接対決が実現する。
しかし、本格化を遂げたジェラルディーナの前にロバートソンキーは2着、ヴェルトライゼンデは7着と揃って敗戦。敗れたとはいえ、通算成績でロバートソンキーが2勝1敗で勝ち越しを決めた。
ただ、当時の中山は芝のレースに騎乗した騎手から「内外の有利不利が大き過ぎる」と苦言を呈されていたような特殊な馬場でもあった。後方からインを突いたロバートソンキーと外を回したヴェルトライゼンデという進路取りの差も大きかっただろう。
そして、4度目の対決となった日経新春杯では、前日の雨で稍重に渋った馬場がヴェルトライゼンデに有利に働き、ロバートソンキーに不向きな展開を作り出したともいえないだろうか。
結果だけを見た場合、59キロを背負って外国人騎手が勝利に導いたヴェルトライゼンデと、デビュー16年目にして重賞勝ちすらない伊藤工真騎手のロバートソンキーが、2キロ差をもらったにもかかわらず、見せ場も作れなかったように映った。
「期待ハズレ」も見限りは早計!?
だが、この敗戦については情状酌量の余地もある。
自在性のあるヴェルトライゼンデに対し、ロバートソンキーは器用さに欠ける弱点があり、スタートの出脚もそれほど速くはないタイプ。そこへきてハナを奪ったアフリカンゴールドがマイペースで1000m通過62秒1に落としたことで、一瞬の切れと機動力を求められる展開も不運だった。
勿論、他の騎手が騎乗していたら結果が異なる可能性もゼロではなかっただろうが、敗因を伊藤騎手のみに求めてしまうのは酷にも感じられる。対戦成績で2勝2敗のイーブンになっただけと考えれば、今回の敗戦だけで「期待ハズレ」と結論を出すには早計かもしれない。
かといって伊藤騎手が置かれている状況は、決して安泰といえないことも確か。騎乗馬の確保に苦戦している中で初重賞勝ちを狙えるような馬はロバートソンキーくらいしかいない厳しい現実もある。
この“少し足りないコンビ”を温かく見守るファンは多いだけに、次走こそ実力を遺憾なく発揮できる舞台設定となってくれることに期待したい。