JRA「大本命」ガイアフォース凡走に状態面の不安!? AJCC(G2)C.ルメール「次はさらにいい状態」も…拭い切れない燃え尽き症候群疑惑

ノースブリッジ 撮影:Ruriko.I

 大本命馬がまさかの背信だ。

 22日、中山競馬場で行われたアメリカジョッキークラブC(G2、以下AJCC)を制したのは、岩田康誠騎手が騎乗した4番人気のノースブリッジ(牡5、美浦・奥村武厩舎)。昨年6月のエプソムC(G3)以来となる2つ目の重賞タイトルをゲットした。

「奥村厩舎にはお世話になっているので、恩返しするのが使命でした」

 レースを振り返った岩田康騎手も恩師の期待に応える結果を出して意気揚々。続けて「これからもG1の舞台に行って勝利できるようなパフォーマンスを見せたいです」と、次なるステップに手応えをつかんだようだ。

 これに対し、単勝1.8倍の大本命に推されたガイアフォース(牡4、栗東・杉山晴紀厩舎)は、外から追い上げるも伸び切れず5着。初めてコンビを組んだC.ルメール騎手も「休み明けで速い脚が使えませんでした」と振り返るしかなかった。

 続けて「伸びしろがあります」「大きい馬で、次走はさらに良い状態で走れると思います」と前向きなコメントを残したものの、セントライト記念(G2)で見せたパフォーマンスを思うと物足りなさが残る内容だ。

 昨年9月の同舞台では、日本ダービー(G1)で3着のアスクビクターモアをねじ伏せて快勝した。その実力を買われ、本番の菊花賞(G1)で1番人気の支持を集めたが、レコードで駆け抜けたアスクビクターモアの前に8着と完敗している。当時、騎乗していた松山弘平騎手から「折り合いはついていましたが、距離もあるかもしれません」というコメントも出ていた。

 ただ、昨年の有馬記念(G1)を圧勝し、年度代表馬に選出されたイクイノックスをはじめ、同2着のボルドグフーシュ、マイルCS(G1)を制したセリフォスなど、4歳世代の強さが目立っている。もし菊花賞を凡走した理由が距離だったとしたら、適距離に戻るガイアフォースの巻き返しを信じたファンが多かったことも頷ける。

 しかし、今回のAJCC凡走には少々引っ掛かるところもあった。レースを振り返ってみても特にこれといった不利はなく、見た目には完敗といえるのだ。休み明けだけを理由にするには、あまりにも不甲斐なかった。

 昨年のオールカマー(G2)やスプリンターズS(G1)が開催された際には、レースに騎乗した騎手から「内外の有利不利が大き過ぎる」と苦言を呈されていた中山開催だったものの、外から追い上げてきたエヒトが2着、同じくユーバーレーベンが3着に入った。優勝したノースブリッジが、インにつけた岩田康騎手の好騎乗とはいえ、ガイアフォースが伸びを欠いた理由とはならないはずである。

「大本命」ガイアフォース凡走に状態面の不安!?

ガイアフォース 撮影:Ruriko.I

 そこで浮上するのは状態面の不安だ。陣営が前任者である松山騎手からルメール騎手への乗り替わりを決断したことにより、勝負度合いの強さを感じられたものの、休み明けとしてはスッキリ見えるプラス2キロ。見方によっては、昨秋の疲れが完全に抜け切っていない疑念も抱ける数字だった。

 思い返せば、ガイアフォースが大きな注目を集めたのは、2着馬に7馬身差をつけて圧勝した昨年7月小倉の1勝クラスだ。このとき、芝2000mを1分56秒8というスーパーレコードで走っている。そこから昨年のセントライト記念で後のG1馬と壮絶な叩き合いを演じ、長丁場の菊花賞で力尽きているのだ。

 実際、昨年は3月→5月→7月→9月→10月と連戦しており、菊花賞の敗戦から約3ヶ月の休養を挟んだとはいえ、肉体的な蓄積ダメージが抜け切っていなかった恐れもある。戦前の杉山晴調教師は、中間に時計を出していたため、最終追い切りは調整程度とコメントしていたが、動きが本調子だったかどうかは分からない。

 ひとつ懸念があるとすれば、休み明けだけに敗因を求めていいのかどうかだ。菊花賞馬となったアスクビクターモアは有馬記念を回避。陣営は将来を考えて休養を選択している。こちらは激戦のダメージを考慮してのことだろう。

 もしガイアフォースの凡走に見えない疲れや、「燃え尽き症候群」のような精神的なものが関係していたとしたら、一度使われたからといって安易に「次こそは大丈夫」と信じるには危うさを感じた。

 いずれにしても、同馬が世代トップクラスの1頭であることは確か。次走で余計な心配だったことを証明してくれることに期待したい。

高城陽

大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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