岩田康誠×皐月賞1番人気の初仔がデビューV!偉業が潰えた「怪物候補」の血を繋ぐ、陣営の飽くなき挑戦に熱視線

岩田康誠騎手 撮影:Ruriko.I

「名牝になれるような器だなと思います」

 今から遡ること6年前(2017年)の春。皐月賞(G1)を直前に控えた共同会見で、そう語ったのは岩田康誠騎手だ。

 岩田康騎手が絶賛した相手は、牝馬のファンディーナ。デビューは3歳1月と遅かったものの、新馬→つばき賞(1勝クラス)→フラワーC(G3)と無傷の3連勝を決めた逸材である。

 過去3戦で2着に計15馬身差をつけた怪物候補だったこともあり、1948年のヒデヒカリ以来69年ぶりの皐月賞牝馬Vに周囲の期待は高まっていた。牝馬にして64年ぶりに日本ダービー(G1)を制したウオッカや、三冠牝馬ジェンティルドンナの背中を知る男が認めたのだから納得もいくだろう。当日は共同通信杯(G3)覇者のスワーヴリチャード、弥生賞(G2)を制したカデナらを抑え、牝馬ながら1番人気に推された。

 しかし、牡馬一線級の壁は厚く、7着と初黒星。いつも通り先行して押し切りを狙ったが、最後の直線で後続に捕まり万事休す。

 レース後には岩田康騎手が「4角で先頭に立つまでは良かった。もまれた経験がないのも頭に入れていたんだけど…」と振り返れば、管理する高野友和調教師も「甘くはなかったですね」と肩を落とした。

 その後は日本ダービーかオークス(G1)への参戦を視野に入れていた陣営だったが、疲れが抜けずクラシック2戦目を断念。夏場は休養に努め、ローズS(G2)から復帰することになったが、こちらも1番人気の支持を受けたものの6着と結果を出せず……。続く秋華賞(G1)でも13着に大敗するなど、春時点で怪物と謳われた大器がまさかの無冠に終わった。

 さらに、同年末に出走したリゲルS(OP)で9着と敗れた後に右腸骨の骨折が判明し、翌年にはキャリア7戦ながら引退を余儀なくされてしまう。すぐに故郷である北海道浦河町の谷川牧場で繁殖入りすることになったが、高野師も「みなさんに申し訳ないです。痛恨の念があります」と謝罪コメントを残していただけに、やり切れない思いがあったかもしれない。

 あれから月日が流れ今月。そんなファンディーナ陣営に、6年前の雪辱を果たす絶好機が訪れた。同馬の初仔であるエルチェリーナ(牝3、栗東・高野友和厩舎)が、29日の中京新馬(芝2000m)を勝利したのである。

 ただ勝った訳ではなく、その内容には目を見張るものがあった。

 鞍上の岩田望来騎手が「ゲートが速くなかった」と振り返った通り、スタートこそ少し遅れたものの、道中で6、7番手まで挽回。前半で脚を使ったにもかかわらず、最後の直線でウィズユアドリームが抜け出したところを、上がり最速33秒9の末脚を繰り出して内から鮮やかに差し切った。

 レース後には、鞍上も「能力がありますし、順調にいってほしいです」とパートナーを称賛。父の岩田康騎手が主戦を務めたファンディーナの長女とあって、息子の岩田望騎手にも特別な思いが生まれたかもしれない。また母娘ともに管理する高野師も「追い比べで気合と根性を示してくれました」と絶賛した。

 ファンディーナと同じ3歳1月デビューとなったが、まだクラシックへの時間は十分に残されている。新馬が中距離だったこともあり、今後の結果次第では桜花賞(G1)ではなく、母と同じ皐月賞出走を見据えているかもしれない。陣営の今後の決断にも注目だ。

GJ 編集部

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