ドルチェモア「NHKマイルC直行」で牡馬クラシック戦線に暗雲…波乱の世代に新星は現れるか

 2022年度のJRA賞授賞式が30日に都内のホテルで開催され、昨年の競馬界を彩ったホースマンたちが集結。関係者が喜びの声を語った中、思わぬ“サプライズ発表”も飛び出して話題になった。

 その場面というのが、昨年の最優秀2歳牡馬に輝いたドルチェモアの表彰でのひと幕。馬主である株式会社スリーエイチレーシングの橋本征道氏が、同馬の今後について「須貝先生ともお話をしたのですが、おそらくNHKマイルC(G1)に直行することになると思います」と発言したのだ。

 たしかにドルチェモアは札幌・芝1500mの新馬戦をデビュー勝ちし、以降はサウジアラビアRC(G3)と朝日杯FS(G1)のマイル戦を連勝。マイルより長い距離の経験はないとはいえ、レースセンスの高さを評価する記者は多く、クラシック展望企画では皐月賞(G1)の有力馬としてその名前を挙げる評論家も少なくなかった。

 それだけに、4月16日の皐月賞から幕を開けるクラシックロードはより混迷を極めることになりそう。特にこの2020年産の世代は期待馬がよもやの敗戦を喫するというシーンが目立ち、昨年の2歳重賞では高配当が連発。それを象徴する結果となったのが、暮れのホープフルS(G1)である。

 皐月賞と同舞台で行われるレースとあって、翌年のクラシック戦線を目指す有力馬たちも多く参戦した中、結果は14番人気のドゥラエレーデが勝利。2着に7番人気のトップナイフ、3着にも6番人気のキングズレインが入り、3連単の配当は246万6010円という大波乱となった。

 人気馬が軒並み力を発揮できなかったレースとあって、当然ながらレースレベルにも疑問符は付く。事実、ホープフルS出走馬の次走は芳しくなく、その成績は【0-0-2-3/5】。同世代の他路線組に勝つことができていないのだ。

 同条件の中山・芝2000mで行われた京成杯(G3)では、ホープフルSで勝ち馬と0秒4差の6着だったセブンマジシャンが1番人気を裏切る3着。直線で不利は受けたものの、勝ったソールオリエンスには0秒6差をつけられるなど、厳しい結果に終わっている。

 また、同レースにはシーウィザードも出走していたが、こちらも4番人気で7着。さらに21日に中京競馬場で行われた若駒S(L)に出走したセレンディピティも、1番人気で5着に敗れた。

 そして先週は、ジェイパームスとフェイトがセントポーリア賞(1勝クラス)に出走するも3着と4着。重賞やリステッド競走だけでなく、自己条件でも結果が出なかったというのは、前走G1組としてはショッキングな結果と言わざるを得ない。

波乱の世代に新星は現れるか

 こうした状況も相まって、無敗で2歳王者に登り詰めたドルチェモアにはこの世代の代表として大きな期待がかかっていただけに、今回の「NHKマイルCへの直行」、すなわち皐月賞をスルーするという決断が大きな話題となった。

 過去には同馬の祖父にあたるキングカメハメハがNHKマイルCと日本ダービー(G1)を連勝して“変則二冠”を成し遂げているが、これは歴史を振り返ってみてもかなりのレアケース。おそらく今年のクラシック戦線はドルチェモア不在で回っていくことになるのだろう。

 加えて、朝日杯でドルチェモアの2着だったダノンタッチダウンもNHKマイルCを目標に進めていくことが年明けに報じられており、三冠初戦は朝日杯のワンツー不在が濃厚。となれば、限られた時間の中で新星の登場に期待するほかない。

 今週末は中京競馬場できさらぎ賞(G3)が行われ、来週は東京競馬場で出世レース・共同通信杯(G3)も控えている。今後に期待を抱かせるようなパフォーマンスはもちろんのこと、余裕をもって皐月賞を目指していくためには賞金の加算も必須。ここは内容と結果、両方が求められる戦いとなる。

「3歳牡馬低レベル説」に加えて、「最優秀2歳牡馬不在」で迎える2023年の牡馬クラシックロード。こうした現状の不安を吹き飛ばすようなニューヒーローの誕生に期待したい。

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