JRA中内田充正厩舎「迷采配」で1勝取りこぼし、まるでリバティアイランドVSラヴェルの再現も…勝ち馬が見せたクラシック級のハイパフォーマンス

坂井瑠星騎手 撮影:Ruriko.I

 まだこれといった抜けた馬の出ていない3歳クラシック戦線だが、先週末の日曜東京で将来が楽しみな馬がデビューした。根岸S(G3)が行われたこの日、ファンの注目を集めたのは6Rのメイクデビュー(16頭立て、芝1800m)だ。

 このレースで1番人気に支持されたのは、川田将雅騎手が騎乗したパールロード(牡3、栗東・中内田充正厩舎)。スクリーンヒーロー産駒の半姉アートハウスも川田騎手とのコンビで昨年の牝馬クラシックを盛り上げた実力馬で、ロードカナロア産駒の弟もまた、川田騎手でデビューした。両馬の母であるパールコードに強い思い入れがあるだけに当然の組み合わせといったところだろう。

 良血馬に厩舎の主戦を任せている川田騎手を配していたため、こちらに人気が集まったものの、レースを制したのは2頭出しで挑んだ僚馬のロードデルレイ(牡3)の方。こちらには坂井瑠星騎手が騎乗していた。

 パールロードが直線で進路取りに苦心するシーンも見られたが、同馬の上がり3ハロン34秒2のタイムを1秒も上回る33秒2をマークして4馬身も突き抜けたのだから恐れ入る。勝負どころでライバルに前が詰まる大きな不利がなかったとしても、勝ち馬は変わらなかったのではないかと思えるほどの強さだった。

 また、1番人気の川田騎手がスムーズさを欠いて、その外から坂井騎手が突き抜けるケースは、まるで昨年のアルテミスS(G3)の再現にも映った。ちなみにこのときも東京で1番人気のリバティアイランドが外に出せずに苦しんでいるところを、出遅れて外を回したラヴェルが交わしてゴールしている。

中内田充正厩舎「迷采配」で1勝取りこぼし…

 形としては中内田厩舎の管理馬がワンツーフィニッシュした訳だが、致命的な不利のあったパールロードも3着馬に1馬身の差。自身の4馬身前にロードデルレイがいたことを考えれば、1頭のみの出走なら勝てていた計算だ。それぞれが別のレースに出走していたなら2頭とも勝利を挙げられた可能性もあり、こちらについては結果的に中内田調教師の“迷采配”といえるのかもしれない。

 ただやはり将来性の高さを感じたのは圧勝劇を演じたロードデルレイだ。道中も坂井騎手が押っつけ気味に促していたように、粗削りな走りや幼さも見え隠れする内容。それでいてエンジンが掛かると瞬く間に突き抜けただけでなく、末脚の切れも素晴らしかった。血統的な面では近親にこれといった活躍馬が出ていないが、距離延長も問題がなさそうな雰囲気もクラシックを期待したくなる。

 勝ちタイムの1分48秒3(良)は、期待馬が揃っていた9Rのセントポーリア賞(1勝クラス)のそれと0秒3差。これよりスローの展開を後方から突き抜けたのだから価値がある。

 レース後、中内田師からはロードデルレイの勝利を「うまく成長させられるようにやっていきたいと思います」と評し、敗れたパールロードについても「伸びしろのある馬。また改めて期待したいと思います」と上々のジャッジを下した。

 時期的に2月に入り、皐月賞(G1)を目指すにはローテーション的に少々難しくなるタイミング。いずれも先々に期待しているニュアンスのコメントのため、日本ダービー(G1)から逆算する感じだろうか。

 混戦の様相を呈している今年の3歳世代だけに、将来楽しみな素質馬が登場したと言えそうだ。

高城陽

大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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