JRAイクイノックスとの「真の最強対決」へ満点回答! 強いダービー馬が不安の声をシャットアウト、それでも武豊の夢に「厭戦ムード」のなぜ?
12日、阪神競馬場で行われた京都記念(G2)は、19着に惨敗した昨年10月の凱旋門賞(仏G1)以来の復帰戦となったドウデュース(牡4、栗東・友道康夫厩舎)が優勝。G1馬3頭が揃ったハイレベルの一戦を2着馬に3馬身半差の楽勝で飾った。
復活を期す昨年のダービー馬と2年前の年度代表馬エフフォーリアが初対決することでも話題となった今年の京都記念。レース中に心房細動を発症したライバルを尻目に、ただただドウデュースの圧倒的な強さだけが際立つレースとなった。
「今日はドウデュースらしい走りが出来ました。勝負どころはこの馬らしい反応で今日はこの馬らしさが出せて良かったです。昨年のダービー馬ですしもう一度最強と言われる結果を出していきたいですね」
パートナーの走りに主戦の武豊騎手も上々の感触を掴んだだろう。「もう一度最強」という言葉を含むレース後のコメントには、同世代のライバル・イクイノックスを意識しているようにも感じられた。
終わってみれば満点回答だった京都記念だが、ドウデュースにとって歓迎できない負のジンクスもあった。
強いダービー馬が不安の声をシャットアウト
何しろこのレースは、とにかくダービー馬が勝てないという伝統も話題になっていた。過去、ダービー馬が勝利を挙げたのは、1948年春のマツミドリ(83年まで年2回実施)が最後。近年でもマカヒキ、レイデオロ、ワンアンドオンリーなどが敗れ、武豊騎手自身も2015年にキズナとのコンビで3着に、2021年にはワグネリアンとのコンビで5着に敗れている。
また、当初予定していたジャパンC(G1)を「もう少し時間が欲しいという感じ」「どこか悪いというわけではありません」「中途半端な状態では出せない」と歯切れの悪いコメントで回避。失意のフランス遠征による疲れや精神面のダメージを懸念されたのは至極当然かもしれない。
当日のパドックで発表された馬体重の508キロは、究極仕上げで挑んだダービー出走時の490キロと比較して18キロ増で過去最高体重を記録。軽めの最終追い切りを振り返っても、余裕残しだったようにも映った。そんな外野の心配をよそに「聞こえませんでした」といわんばかりの圧勝劇を演じたのだから、これには凡走を危惧した穴党たちも舌を巻くしかなかった。
次走にメイダン競馬場で行われるドバイターフ(G1・3月25日)を予定しているドウデュースだが、日本馬の苦戦が目立つ欧州ではなく好走例の多いドバイが舞台。同日に開催されるドバイシーマクラシック(G1)に出走を予定しているイクイノックス同様、負けられないレースとなるだろう。
一方、昨年より一段とパワーアップした姿を見せたドウデュースだが、スターホースの復活に際し、秋の路線選択を心配する声も上がった。
適性を疑問視されたロンシャンの悪夢
今や凱旋門賞優勝は日本競馬界の悲願ともいわれ、武豊騎手もまた「勝つことが夢であり、人生のゴールです」と語るほど思い入れの強い舞台である。レジェンドから「もう一度最強」というワードが出たことからも、世界最高峰の舞台に挑戦する資格の持ち主ともいえる。
ただ、やはり懸念せざるを得ないのは、日本でこれほどまでに強い馬が、昨年の遠征でまったくいいところもなく連敗を喫してしまったことだ。京都記念の内容が武豊騎手のいう「ドウデュースらしい走り」なら、フランスでの姿は「ドウデュースらしくない走り」に他ならない。
実際、ネットの掲示板やSNSでは、一部のファンから「今年は国内で走って欲しい」「イクイノックスと2頭で盛り上げてもらいたい」「もう凱旋門賞に出なくてもいいのでは?」といった厭戦ムードの漂う意見も散見。もし善戦していれば、今年こそと期待された可能性も高いが過酷な現実に直面しただけに、適性を疑問視されたロンシャンの悪夢が蘇ったファンも少なくなかったということか。
そこで気になるのは、やはり武豊騎手の考えである。パートナーの実力を最も理解している主戦としては、自身の夢も懸かる舞台に再挑戦したい思いは強いはず。幸いにもオーナーの松島正昭氏は武豊騎手の大ファンのため、レジェンドに「行きたい」と言われれば「NO」といわない可能性が高い。
1度の失敗のみで勝算が低いと決めつけてしまうには早計かもしれないが、強いドウデュースを日本の競馬で観たいと望むファンが多いことも確かだ。おそらく夏前には、秋のローテーションの発表があると思われるドウデュース。陣営の選択に注目したい。