JRA「強制卒業」させられたリーディング下位騎手のフリー化が続々、内輪揉めや騎乗馬の確保を心配する声も…「誰も得をしなかった」介入とは

 JRAが先月27日に発表した内容によると岩部純二(美浦・萱野浩二厩舎)、菊沢一樹(美浦・菊沢隆徳厩舎)、亀田温心(栗東・北出成人厩舎)ら3名の騎手が、3月1日付けでフリーとなることが分かった。

 リーディング上位にいるわけでもない顔触れだけに、少々唐突に思えるタイミングではあるが、先日報じた厩舎経営の舞台裏を考えれば納得がいく。

 ネットの掲示板やSNSでは、「岩部騎手や亀田騎手がフリーになったら騎乗馬が集まらなくなるのでは?」「菊沢騎手は父親の厩舎なのに親子喧嘩でもしたのか」など、様々な憶測が飛び交っているものの、やはりJRAによる介入が関係していると思われる。

「誰も得をしなかった」介入とは

「これまでアバウトだった給料の明確化が及ぼした影響でしょう。この件は少し前からトレセンで話題になっていました。というのも厩舎所属の騎手は、調教師から月数万円程度の給料で騎乗馬を任せるような関係だったのですが、JRAから改善を求める指示が入ったようです」(競馬記者)

 その結果、実質的に厩舎の“社員”である助手や厩務員などと同じく、所属年数によって支払われる額が変わることになったらしい。事実上の賃上げとなる騎手としては歓迎すべき話なのだが、“社長”である調教師にとっては一大事。デビューから何年も厩舎に所属している騎手には、年数に応じた額を支払う必要に迫られた訳である。

「例えば46歳の岩部騎手の場合、具体的な金額は伏せますが、厩務員など他スタッフに照らし合わせると、もっと貰えるはずですが現実はそこまでは貰っていませんでした。実際は月数万円程度の給料と競馬で定期的に騎乗させるという口約束のようなもの。これは菊沢騎手や亀田騎手もほぼ似たような感じです。彼らは若い分、岩部騎手ほどではないですが、それでも今よりは多く貰える計算です」(同)

 とはいえ、給料が上がるどころか厩舎経営の関係でフリーにならざるを得なくなったのでは元も子もない。

 というのも、安い給料だからといってこれまで所属騎手側が、泣き寝入りしている訳でもなかったからである。彼らにとっては騎乗馬を確保する事が最優先であり、調教に乗せてもらい、競馬で乗せてくれさえすれば特に問題はなかった。何しろ1レース騎乗するだけで約3万円を貰え、入着すれば進上金もあるため、たとえ額面上の給料が安かろうと、何鞍か乗れば十分に足りる金額だったのである。

 にもかかわらず、JRAからグレーな部分を排除するように指摘が入ったため、結果的に調教師も騎手も誰も得をしないような感じになった。誰が主導してリークしたのかはわからないが、効果があったのかどうかは微妙なところだろう。

 また、今回は上記の3名がフリーとなったが、水面下で準備をしている調教師、騎手は他にもいるという。特に複数の騎手が所属している厩舎では、誰がフリーになるかと話し合いが行われているようだ。

 これからもこの手の話は出てくるだろうが、人間関係で大きなトラブルなどがあった訳でもなく、影響はそれほどないのではないかとも見られている。結局のところ、所属からフリーになっただけで、両者の関係は3月からも特に変わらないという話だった。

高城陽

大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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