福永祐一「お父さん似」の証言に膨らむ期待、タスティエーラが挑む“父の悲願”

 5日に中山競馬場で行われた弥生賞ディープインパクト記念(G2)。牡馬クラシックにつながる伝統のトライアルレースを制したのは、3番人気のタスティエーラ(牡3歳、美浦・堀宣行厩舎)だった。

 昨年デビューの新種牡馬・サトノクラウン産駒としては、これが初めての重賞制覇となった。弥生賞といえば、2015年に父も勝利しているレースであり、メモリアルな白星に加えて“父子制覇”というオマケも付いてきたことになる。

 今回が初コンビだった松山弘平騎手も「強い競馬をしてくれた」と相棒を称え、「前哨戦を勝つことができ出走権も得られましたし、次もしっかり走ってくれる馬だと思うので、また頑張ってほしい」と今後に期待を寄せる。

『サンケイスポーツ』が報じた記事によると、オーナーサイドからは2月の共同通信杯(G3)と今回のレースを続けて使ったことによる疲労を心配する声も上がっているそうで、「最終目標は日本ダービー(G1)。皐月賞(G1)は状態次第」と言及したことが報じられた。

 同馬は昨年11月の新馬戦でR.ムーア騎手を背にデビュー勝ち。間隔を空けて挑んだ今年2月の共同通信杯では4着に敗れたものの、続戦した今回はしっかりと立て直してクラシックへの挑戦権を掴んだ。

 かねてから囁かれているように、今年のクラシック戦線は近年稀にみる混戦模様。加えて、朝日杯フューチュリティS(G1)を制したドルチェモアはNHKマイルC(G1)に向けて歩みを進めており、ホープフルS(G1)を勝ったドゥラエレーデは、25日にドバイで行われるUAEダービー(G2)への挑戦を表明した。

 皐月賞は4月16日のため、出走してくるようならドバイワールドカップデーからは中2週という強行日程。その点も加味すると、今年のクラシック初戦は2頭の2歳王者が不在で迎える可能性も大いに考えられる。

 共同通信杯では4着に敗れたタスティエーラだが、ホープフルSで2着に入った実績を持つトップナイフを撃破したのは大きな価値がある。もちろん、相手が休み明けだったことや、そもそもホープフルSのレースレベルがどうだったのかという議論はあるが、この弥生賞を勝ち切ったことでクラシック候補の1頭に躍り出たことは間違いない。

 同馬の素質の高さについては、過去2戦で跨った騎手たちの言葉が証明している。新馬戦で手綱を取った世界的名手ムーア騎手が「将来期待できる馬」と絶賛すれば、共同通信杯で騎乗した福永祐一騎手も「これから経験を積んで良い馬になる」と、その将来性に太鼓判を押した。

福永祐一騎手から「お父さん似」の証言 膨らむ期待

 また、福永騎手からは「お父さんによく似ています」という気になるコメントもあった。同馬の父であるサトノクラウンといえば、2016年の香港ヴァーズ(G1)と2017年の宝塚記念(G1)を制した実力馬で、福永騎手は新馬戦と弥生賞、そして古馬になってから2016年の天皇賞・秋(G1)と3度の騎乗機会があった。

 偉大な父の背中を知る男の口から「よく似ている」という言葉が飛び出したのだから、タスティエーラの将来への期待は膨らむばかり。そしてその言葉通り、父が勝利した弥生賞で重賞初制覇。大舞台への道が開かれた。

 サトノクラウンは弥生賞を勝利した後、皐月賞では6着に敗れ、日本ダービーはドゥラメンテとサトノラーゼンに続く3着。わずか「0秒3」の差で栄冠には届かなかった。それだけに、初年度世代の代表産駒としてクラシックロードに辿り着いたタスティエーラに与えられた使命はひとつ。クラシックで“父の雪辱”を果たすことだ。

 なかでもダービー制覇は、父を所有したサトミホースカンパニー代表・里見治氏にとっても悲願であり、今なお手が届いていない夢である。今年に入って「サトミホースカンパニー解散」という驚きのニュースも飛び込んできており、タスティエーラには「サトノ」の想いも背負っての奮闘が期待される。

 思えば、「父によく似ている」と同馬の資質に太鼓判を押した福永騎手は、天才騎手と称された父・洋一さんが成しえなかったダービー制覇を2018年にワグネリアンとのコンビで成し遂げ、「福永家にとっての悲願でした」と涙を流した。

 そんな歴史を持つ男から直々にお墨付きをもらった逸材が、同じように父の想いを背負ってクラシックのタイトルを掴み取ることが叶えば、これ以上のドラマチックな展開はない。

 少し遅れたデビューから切り拓いたクラシックロード。父の悲願への挑戦権を得るという使命は果たした。あとは勝利という結果を掴み取るだけ。タスティエーラの今後から目が離せない。

GJ 編集部

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