JRA介入も前途多難な新人騎手デビュー、「飽和状態」でG1ジョッキーすら騎乗馬確保に四苦八苦…過酷な現実の裏事情
先週の開催では、今年の新人騎手が無事にデビューした。1996年の福永祐一元騎手以来となる史上3人目のデビュー2連勝を決めた、昨年の角田大河騎手のような話題はなかったものの、田口貫太騎手と小林美駒騎手が馬券に絡む健闘を見せた。この調子なら近いうちに初勝利もあるだろう。
昨年は10人がデビューだったこともあり、騎乗馬のいない騎手や乗鞍があっても1鞍というケースもあったが、今年は全員が5~9鞍を確保とそれなりのチャンスに恵まれた。
騎乗馬が偏らなかった背景には、新人を預かる調教師に対してJRAから、ちょっとした要望があったらしい。その内容は、「弟子を預かった以上は、ある程度我慢して乗せてやって欲しい」というもの。関西では比較的新人や若手にチャンスが与えられているが、関東では様子見する風潮もあったため、関東の新人には朗報といえるだろう。
とはいえ、結果を残さなければ生き残れない弱肉強食の世界であるのも事実。レース数や頭数には限りがあるため、生存競争は激化する一方だ。
ちなみに先々週の小倉開催の場合、多い時で60人以上の騎手がいたそう。騎乗馬の多い福永騎手の引退で、お手馬の分散が予想されるとはいえ、これらを引き継ぐのはおそらくトップクラスの騎手。そこへきてさらに6人の新人が加わったのだから、中堅や若手には騎乗馬の確保が難しい時代になりつつある。
騎乗馬確保に四苦八苦…過酷な現実の裏事情
「2場開催だった先週は、1日1鞍や土日のどちらかが騎乗なしの騎手が多数。例えば藤岡佑介、池添謙一、石橋脩騎手らG1勝ちのあるベテランですら計3鞍の騎乗でしたから、若手はもっと大変ですよ。昨秋にG1初勝利を決めた荻野極騎手も計2鞍なら、角田大和騎手も日曜の1鞍のみ。フリーになったばかりの亀田温心騎手は騎乗馬がいませんでした。
それ以外にも昨年デビュー組の土田真翔騎手、大久保友雅騎手も騎乗馬ゼロ。山田敬士騎手は小桧山悟厩舎の所属ですが、後輩の佐藤翔馬騎手のデビューに合わせて騎乗馬がそちらに流れてしまいましたが、デビュー5年目で減量特典が無くなったことも大きかったでしょう」(競馬記者)
乗鞍の確保に苦心する騎手たちにとって、さらに深刻なのは短期免許で来日する外国人騎手の存在だ。コロナ禍の収束も相まって昨秋から複数来日。重賞レースで日本人騎手を凌ぐ活躍も目立った。当然ながら春の大レースでも再び外国人騎手が来日を予定している。
ただでさえ乗鞍に対して騎手の数が飽和状態の上、海外の刺客までライバルとなるのだから、結果を残せなければ淘汰されていく。体は空いていても肝心の騎乗馬を確保できない状況が続くようなら最悪の場合、若くして引退や助手に転身するケースも出るだろう。
華やかに見える競馬の世界でも、こういった過酷な現実は日常茶飯事だ。今村聖奈騎手がブレイクした昨年の世代も、同期で明暗が顕著に分かれつつある。今年デビューした新人も、何とか荒波を乗り越えて欲しいものである。