「キョロキョロ」松山弘平は全面謝罪、挟まれた横山典弘も致命的不利…金鯱賞(G2)「外からスイスイ」川田将雅がひとり勝ち

川田将雅騎手

 12日、中京競馬場で行われた古馬の中距離重賞、金鯱賞(G2)を制したのは、1番人気に支持された川田将雅騎手のプログノーシス。後方から外を回しての鮮やかな差し切り勝ちを決め、重賞初勝利を手に入れるとともに来月2日の大一番である大阪杯(G1)の有力候補として名乗りを上げた。

 遅れてきた大物がようやく真価を発揮した勝利だった。これまで高い素質を認められながらも、3連勝で挑んだ昨秋のカシオペアS(L)ではアドマイヤビルゴの2着に惜敗。前走の中日新聞杯(G3)でも大本命に推されながら、脚を余すような格好で4着に敗れていた。

 その一方、敗れたレースはいずれも川田将雅騎手とは別の騎手。主戦とのコンビでは4戦4勝と負けなしだっただけに、巻き返し可能と見たファンも多かったようだ。実際、過去に敗れたパートナーと格の違いを証明する勝利だった。コンビ5戦5勝なら“実質無敗馬”といっていいのかもしれない。

 とはいえ、今年の金鯱賞は枠とそれぞれの騎手の判断が、レースの明暗を分けたともいえそうだ。12頭立てのレースで大外の8枠12番を引いたことも、結果的にプログノーシスに幸運をもたらした。外からスイスイと伸びてきた勝ち馬に対し、直線で致命的な不利を受けた2頭のツキのなさが目立ったことも事実である。

 横山武史騎手から父の横山典弘騎手へと乗り替わったアラタは、内枠を利した絶妙なポジション取り。道中のリズムもよく、最後の直線を迎えて末脚を炸裂させるだけだったのだが、さあこれからというタイミングで致命的な不利を受けた。

 前を走っていたヤマニンサルバムが内へ切れ込み、行き場のなくなったアラタは追い出しを待たされる痛恨のロス。残り200mあたりでようやく進路の確保に成功するも、外からトップギアで伸びたプログノーシスとの脚色の差は歴然だった。スムーズな抜け出しで加速できていれば、3着以上も期待出来たのではないか。

マリアエレーナ 撮影:Ruriko.I

 何とか馬券圏内に食い込んだアラタに対し、全くいいところもないまま、不完全燃焼に終わってしまったのは、松山弘平騎手のマリアエレーナだ。

「キョロキョロ」松山弘平騎手は全面謝罪

 最終コーナーを7番手で迎えたものの、直線は周囲を他馬に囲まれて為す術なし。レース映像でも懸命に進路を探そうとキョロキョロしている松山騎手の姿が映っている。打倒プログノーシスの最右翼に期待したファンから2番人気に支持されたが、結果的に何も出来なかった鞍上に対して、ネットの掲示板やSNSでは厳しい意見も見られた。

 これには松山騎手もレース後のコメントで「この馬の能力を出してあげることができず申し訳ございませんでした」と全面謝罪。これが実力ではないことは分かっているだけに、次走での巻き返しに期待したい。

 ただ終わってみれば、内を狙ったライバルたちのゴチャつきを尻目に、外からロスのない競馬をしたプログノーシスに展開も味方した格好。戦前は不利に思えた大外も、12頭立てなら大きなビハインドとならなかったようだ。

 実際、逃げたフェーングロッテンの刻んだ1000m通過のラップは60秒9。後半のそれが2秒も速い58秒9だったことを思えば、レース展開は超スローの瞬発力勝負といえるだろう。

 ちなみに不覚を取った前走の中日新聞杯のときは、前後半61秒9-57秒5でその差はなんと4秒4。しかもフルゲートのレースで直線を後方3番手から、慌てて追い出しての敗戦なら、手綱を取った藤岡佑介騎手の騎乗に非難の声が溢れたのも仕方なかったか。

 前日土曜の中山牝馬S(G3)では、1番人気アートハウスに騎乗して4着に敗れていた川田将雅騎手。輸送による12キロ減の馬体重や直線でスムーズな進路取りに失敗するシーンもあったが、翌日にこうしてすぐ巻き返すあたりは、さすが昨年のリーディングジョッキーと唸らされた。

 おそらく次走に濃厚な大阪杯は、さらに強力なメンバーが立ちはだかる。金鯱賞では「ひとり勝ち」したが、無敵のコンビは6戦6勝に伸ばせるだろうか。

高城陽

大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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